プライマリ・ケアと専門治療の連携に
国内の片頭痛の年間有病率は約8%で、とくに20~40歳代の若年女性に多いと言われている。片頭痛を含む頭痛の大半は命に関わることはないが、欠勤や休業、学業や労働のパフォーマンス低下などによる間接的経済損失は1人あたり年間176万円にのぼるとの試算もある。
頭痛の治療は、痛みが発生したときに服用する「痛み止め」の適切な選択と、頭痛の重症度や頻度を改善する「予防薬」の使用が2本柱とされる。特に生活に支障を及ぼす片頭痛は、高い効果が期待される新薬の登場で予防治療などのコントロールが可能となっているが、一方で緊張型頭痛や三叉神経・自律神経性の頭痛は片頭痛と治療方法が異なるため、誤った頭痛の診断は治療の遅れや症状の悪化に繋がる危険性がある。
そのため正確に診断できる頭痛専門医や脳神経内科・外科医などによる介入が重要となっているが、約1000万人以上と推測される片頭痛の患者に対し、頭痛専門医は全国でわずか949人しかおらず、患者の多くは非頭痛専門医による診断・治療を受けているのが現状だ。
一方で頭痛の診断を正確に行うために問診に長時間を要するため医師の負担も大きく、患者の多くは医療機関の受診を躊躇し、正しい診断されないまま痛み止めだけを使用している状況にあるという。頭痛に対する正しい治療を行わずに痛み止めを使い過ぎると、慢性片頭痛や痛み止めの使いすぎによる頭痛(薬物乱用頭痛)を発症し、難治性へと悪化する危険性もある。
開発したAIについて研究グループは、「患者さんの問診にかかる時間を削減し、頭痛専門医・非専門医に関わらず負担を軽減できる可能性がある。また専門医の治療が必要な患者さんの見落としを防ぎ、プライマリ・ケア医と専門的治療センターとの連携促進につながる可能がある」との期待を提示。問診票のみで血液検査などは一切不要であることから、「オンライン診療やスマートフォンアプリなどに組み込むことで、より広く利用していただき、患者さんが正しい頭痛の診断を得られるきっかけとなる可能性がある」とし、今後さらに、複数の医療機関や企業などとAIの有用性を検討するとしている。