日本全国で相次ぐ強盗事件をめぐり、フィリピンの首都マニラで取材に当たった。事件に関与したとされる4容疑者は収容中の入管施設で職員に賄賂を支払い、犯行指示用のスマートフォンを入手していたようだ。取材に応じた元施設管理関係者は、賄賂があれば通信機器やアルコール飲料、ときには薬物も手に入る施設内の環境を「悪人の楽園」と表現した。
フィリピンではこの手の腐敗のニュースが絶えない。昨年11月にはマニラの刑務所で長さ200メートルを超える地下トンネルが見つかり、脱獄用や獄中への物資運搬用との見方が広がった。掘削に関与したのは、刑務所を管轄する司法省矯正局長。当人は「日本軍が隠した財宝を探すため」などと説明したが、言葉通り信じる市民は少なそうだ。
強権的な政策で知られたドゥテルテ前大統領が任期末期まで高い支持を集めたのも、汚職撲滅に向けた強い姿勢が共感を集めた面がある。ただ、そのドゥテルテ氏も「汚職は風土病だ」と述べ、根絶には遠いとの考えを示した。
今回の事件は通信機器の発達によって犯罪組織がグローバル化し、日本の司直の手が届きにくい海外を拠点とする実態を改めて浮き彫りにした。汚職は大なり小なり途上国を覆うが、「悪人の楽園」が拡大することがあってはならない。(森浩)