死産や早産、低出生体重児の出生など数多くのリスクをもたらすとされる妊娠中の喫煙だが、妊婦自身の喫煙以上に周囲からの受動喫煙が「妊娠高血圧症候群」という病気の発症リスクを高めることが、東北医科薬科大学などが行った調査でわかった。受動喫煙にさらされた妊婦群の同疾患の発症リスクは、妊婦本人の喫煙に比べて2倍以上高く、研究グループは妊婦自身の喫煙対策に加えて受動喫煙対策の重要性を指摘している。
妊婦高血圧症候群の発症リスクに
妊婦の約20人に1人の割合で発症するといわれる妊婦高血圧症候群。妊娠34週未満で発症した場合に重症化しやすく、脳出血のほか肝臓や腎臓の機能障害を引き起こす恐れがある。さらに胎児にも発育不全などの悪影響を及ぼし、最悪の場合死に至るケースもある。
こうした妊娠高血圧症候群の発症に妊婦本人による喫煙が影響していることが近年、環境化学物質と子供の発育の関係を調べる国の出生コホート(追跡)調査からもわかっているが、一方で周囲からの受動喫煙の影響については明らかにされていなかった。
そこで研究グループでは出生コホート調査に参加している妊婦を対象に、受動喫煙の有無で妊娠高血圧症候群の発症に違いがあるかを分析。妊娠中に受けた受動喫煙の状況を「めったにない」「1-3日/週」「4-7日/週」の3群に分類し、各群で妊娠高血圧症候群の有無を調べた。
その結果、週に「1-3日」の頻度で受動喫煙にさらされている妊婦の発症リスクは「受動喫煙なし」に比べて1.05倍高く、さらに「4-7日」では1.18倍と高くなることがわかった。
さらに受動喫煙の曝露が妊婦の集団に対してどれくらい発症リスクを高めているかについても調査を実施。リスク要因を取り除いた場合、その集団の罹患者をどれだけ減少させることができるかを示す「集団寄与危険割合」を用いて評価した。その結果、妊婦本人の喫煙による集団寄与危険割合は1.81%だったのに対し、受動喫煙に週「1~3日」および「4~7日」さらされた場合、合計で3.8%と「妊婦本人の喫煙」に対して2倍以上の値となった。
研究を行った東北医科薬科大学の目時(めとき)弘仁教授らのグループは、今回の結果について「妊婦自身の喫煙対策だけでなく、妊娠の可能性がある女性が周囲にいる場合の受動喫煙対策も必須であることを示した重要な報告」と位置付けている。