【ワシントン=大内清】米エール大の人道問題研究所は15日までに、ウクライナへの侵略を続けるロシアが生後4カ月から17歳までの子供少なくとも6000人を占領地域から連れ去り、一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島や露本土にある収容施設で組織的な「再教育」を施している疑いが強いとする調査報告書を発表した。戦争犯罪や「人道に対する罪」に当たる可能性が高いと非難している。
報告書は米国務省の委託を受けたもので14日付。露政府の発表や報道内容、交流サイト(SNS)への投稿、衛星写真などを分析し、ロシア側がウクライナ人の子供らを収容している施設が少なくとも43カ所あることを突き止めた。それらの多くはクリミアや黒海沿岸地域、モスクワ周辺などに以前からあったサマーキャンプ施設を流用したもので、一部はウクライナから数千キロ離れたシベリアや極東地域でも確認された。
また報告書は、子供の連れ去りは「露政府の中央によって統制され、あらゆるレベルでの当局の関与」の下で行われていると分析。その主要な目的は「ロシア中心の愛国教育や軍事教育」を施すことにあるとした。
ウクライナでは昨年2月のロシアによる全面侵攻以降、東部ドンバス地方(ドネツク、ルガンスク両州)や南部ヘルソン州などの露占領地域から子供が連れ去られるケースが多数報告されており、ウクライナ側は昨年11月までにその数が1万人を超すと発表している。今回の報告書は、ロシアの公開情報などから被害者数を「少なくとも6000人」としたが、実際はこれよりも「はるかに多いとみられる」と指摘した。
ロシア側は、昨年9月に一方的に併合した東・南部4州の住民は「ロシア人」だなどと主張し、収容施設は孤児を保護したり医療サービスを提供したりするためのものだと説明。ロシア人の里親との養子縁組なども行っている。
報告書は、子供の連れ去りは紛争地域での文民保護などについて規定した国際人道法に抵触する恐れが強いと主張。子供たちに関する情報開示や親族との再会支援、中立的機関による収容施設への立ち入り、一方的な養子縁組の即時停止などを勧告した。
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