東京都三鷹市内で栽培した麦やホップ、酵母を使った「オール三鷹産」のクラフトビールの製造、販売を目指す同市のビール醸造会社「小笠原商店」が16日まで、株式投資型クラウドファンディング(CF)で事業拡大や運営のための資金を募っている。出資すると非上場企業の株式が取得できる制度で、クラフトビール醸造会社の利用は珍しい。同社の小笠原恵助社長(47)は「ビールに興味のある人がこの世界に関わるきっかけになれば」と話している。
「衝撃的だった」。小笠原社長は個人のデザイン事務所を経営していた平成19年、「箕面ビール」に出会い、クラフトビールの世界にのめり込んだ。自らラベルデザインを考案してメーカーに持ち込んだこともあった。
「自分でもやってみよう」と三鷹にビアバーをオープンしたのが25年。さらに機材を入手して自社で醸造する「OGA BREWING(ブルーイング)」としてスタートしたのが31年だった。
ビール造りは、各地の醸造所で聞いて回るなどして独学で始めたが、今ではオリジナルの「三鷹ペールエール」などを製造し併設する店で提供するほか、飲食店などからの委託製造も請け負う。小笠原社長は「意外に頑張れば何とかなった」と笑う。これまで、サッカーJ2「東京ヴェルディ」とタイアップしたビールを製造、販売するなど、展開は多岐にわたる。
その中の1つが「三鷹産」ビールだ。既に市内の農家の協力を得て、大麦、小麦、ホップに市内産原料を使ったビールの製造を行っているが、酵母も市内産にこだわり、「目指すはオール地元産」だ。小笠原社長は「三鷹でとれた原料を基に、三鷹で醸造したビールを楽しめるようにできたら」と語る。
アイデアは次々浮かんでくるが、現在の設備ではこれ以上の事業拡大は難しい。そこで、新たな工場設立などのため、株式投資型CFの利用を決めた。資金とともに、株主として運営に関わる人材の獲得にもつなげたい考えだ。
小笠原社長は、自身の経験も踏まえて「この世界は『飲んで応援』以外に関わる機会が少ないのが実情。こういう取り組みを通じて参加してもらえたら」と期待を込めた。(橋本昌宗)
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株式投資型CFは、非上場の新興企業が資金調達しやすくする制度として平成27年に始まった。小笠原商店では今回、株式とともに、出資額に応じて「株主優待」として同社のビールや、1年間店頭でビールを試飲できるサービスなども提供する。募集の上限額は5千万円。CFの詳細はイークラウド(https://ecrowd.co.jp/projects/18)。