甲府市の百貨店、岡島は14日夜、移転に伴い現在の店舗での営業を終了した。昭和13(1938)年から85年間、現在の場所で営業し、甲府市街地の中心的な存在として長く山梨県民に親しまれてきただけに、閉店を名残惜しむ人々が詰めかけた。同店は近くの商業ビル「ココリ」に移転。来月3日、売り場面積を7分の1に縮小して営業を再開する。
この日午後7時過ぎ、閉店した店舗の玄関口では雨宮潔社長が「長きにわたり、あたたかくご支援いただき、ありがとうございました」とあいさつ。その後、シャッターが閉まり始め、店員らとともに深々と頭を下げた。集まった大勢の客からは、拍手とともに「ありがとう」といった声がかけられた。
14日に来店した60代の男性会社員は「仕事終わりにビアガーデンに立ち寄ったり、週末に家族と一緒にきて楽しんだシンボル的な存在だった」と懐かしそうに話した。60代の女性は「買い物だけでなく、食事をしたり遊んだりしたので、なくなるのは残念で、きょうはお別れを言いにきました」と名残を惜しんだ。
岡島は江戸時代の天保14(1843)年に茶業・呉服として創業。昭和11(1936)年に本格的な百貨店としての営業を始め、2年後に現在の場所に移った。戦後には屋上遊園地を備えたほか、同63(1988)年の増床工事完了で売り場面積が3万2044平方メートルとなり、当時の百貨店としては国内有数の規模を誇った。
現在は建物や設備の老朽化が進み、大規模な改修が必要になったものの、バブル経済崩壊以降の業績低迷で2度の債務超過を経験。経営再建の途上にある中で現店舗での継続を断念し、今回の営業終了に至った。
現在の店舗の土地は不動産大手に売却。同店は同じ中心市街地にある商業ビル「ココリ」に移転し営業を再開する。新店舗は地下1階に食料品売り場、1階に雑貨と化粧品、2階に服飾や家具、催事場と、全体で3フロアでの展開となり、売り場面積がこれまでの7分の1に縮小する。