政府は14日、日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁の後任として、元日銀審議委員で経済学者の植田和男氏を充てる人事案を国会に提示する。これに先だって13日の金融市場は揺れ動いた。大規模金融緩和策が修正されるとの警戒感から、株式市場では売りが先行。一方で植田氏が当面は金融緩和を続けるとの見方も強まったことで、外国為替市場では円売りドル買いの動きが優勢となり、投資家の思惑が交錯した形となった。
10日夕に植田氏の起用が報道された後、初めての取引となった13日の東京株式市場の日経平均株価は大幅に反落し、前週末比243円66銭安の2万7427円32銭で取引を終えた。植田氏が大規模緩和の修正に着手するとの警戒感が強まり売りが先行したほか、10日の米国市場でハイテク株主体のナスダック総合指数が下落した影響も受け、下落幅は一時400円を超えた。
一方、外国為替市場では13日夕時点で1ドル=132円台前半となり、円安ドル高に傾いた。10日夜、植田氏が報道陣に対し「当面は金融緩和を継続する必要がある」との認識を示したことから、緩和修正に対する警戒感が和らいだ。米国では利上げが続く見通しのため、運用に不利な円を売る動きが広がった。
ただ、植田氏の就任が金融市場に与える影響は当面、限定的とみられる。ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは「植田氏に対する見方はまだ定まっていない」と指摘。24日に衆院で予定されている植田氏の所信表明が節目となると予想する。