バイデン米大統領は7日の一般教書演説で、同盟国と連携して先端技術における中国の覇権を阻止する考えを示した。一方、雇用を重視し、国内の生産拠点を手厚く保護していく姿勢も鮮明にした。好調な雇用環境を追い風に政権浮揚を目指すが、経済手腕への評価は低調なままだ。(ワシントン 坂本一之)
「米国の道路や橋は米国製品によってつくられる」。バイデン氏は政府のインフラ事業で米国製資材の使用を義務付ける規制を打ち出した。自動車や通信機器、軍事装備品など幅広い製造業に必要な半導体の製造拠点の国内回帰も促進し、雇用創出を図る。
米国の失業率は1月の雇用統計で1969年5月以来となる低水準の3・4%を記録。雇用はバイデン氏にとって大きな実績であると同時に、再出馬に意欲を示す2024年大統領選に向け低迷する支持率の回復を図る切り札となる。
ただ、米ABCテレビなどが5日公表した世論調査でバイデン氏の経済施策を支持する人は37%にとどまる。就任時に比べ経済的状況が良くないとする人は41%にも達し、インフレで多くの市民が生活向上を感じられないのが実態だ。
有権者の支持獲得には雇用創出だけでなく、インフレ抑制も重要課題となる。さらに、米主導の新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」で中国に依存しない供給網構築を進めており、過度な国内産業保護を進めれば、同盟国や友好国の反発を招く恐れもある。