いわゆる「元徴用工」問題で、韓国の原告側が求める日本企業による賠償を韓国の財団が支払う解決案について、日本側が「見返り」を与えるような動きが報じられた。
1つは、日本が韓国を輸出管理で優遇する「グループA(『ホワイト国』から改称)」に再指定する(産経新聞1月28日)。もう1つは、日本政府が従来、表明してきた「おわび談話」をあらためて確認する案だ(共同通信1月28日)。これらをどう考えるか。
そもそも、元徴用工に対する賠償は、1965年の日韓請求権協定で日本が無償3億ドル、有償2億ドルの経済協力を約束し、請求権問題は「完全かつ最終的に解決」されている。元徴用工たちが賠償金を受け取っていなかったのであれば、それは韓国政府の責任だ。
韓国の財団が、日本の「肩代わり」をするという話でもない。一切の責任は韓国側にある。
これと輸出管理の話は本来、まったく関係がない。
とはいえ、緊迫する東アジア情勢を考えれば、日本と韓国の関係改善は、日本の安全保障にプラスだ。韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、文在寅(ムン・ジェイン)前政権と違って「親北親中路線」から転換を図りつつある。
そうであれば、元徴用工問題を韓国側の責任で解決する機会を捉えて、日韓関係全体を見直すのは悪くない。元徴用工解決案の一部ではなく、新たな日韓関係構築という枠組みの下であれば、議論は可能だろう。