禁煙、高血圧に次いで脂肪肝でも有効性確認 「デジタル療法」保険収載に向け臨床試験 東大など

医師の管理下でスマートフォンなどに搭載されたアプリケーション(以下アプリ)を使って治療を行う「デジタル療法」が、禁煙治療や高血圧治療に次いで脂肪肝の治療にも保険適用される可能性が見えてきた。東京大学の研究グループが非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を対象としたデジタル療法の臨床試験を実施し、世界で初めてその有効性を確認したと発表した。今後、医療機器として薬事承認に向けた最終試験の実施を検討するとしている。

スマホなどを介して医師と患者がつながる「デジタル療法」。NASHの治療でも有効性を確認(Getty Images)※画像はイメージです
スマホなどを介して医師と患者がつながる「デジタル療法」。NASHの治療でも有効性を確認(Getty Images)※画像はイメージです

患者200万人に対し治療法がないNASH

肝臓に脂肪が沈着することで炎症と線維化(組織が異常増殖して硬くなる現象)が起き、肝硬変や、最悪の場合は肝がんに至る脂肪肝。特に肥満を原因として発症するNASHの患者は近年増加傾向にあり、国内の患者数はおよそ200万人にのぼる。「予備軍」と呼ばれる発症前段階の人は1000万人を超えるとの推計もあるが、確立された治療法はなく、減量のための栄養指導や運動の推奨などの取り組みにとどまっているのが現状だという。

こうしたNASHの患者に対する介入方法として東京大学の研究グループが着目したのが「デジタル療法」だ。ヘルステックベンチャー「キュア・アップ」(東京都中央区)とともに開発した「NASH治療用アプリ」は、日々のモニタリングや生活習慣の記録から患者ごとに最適化された治療ガイダンスを提供する仕組みになっている。NASHの治療に必要な患者の認知と行動の変容を促し、習慣の定着をサポートすることで体重減少を通じた改善へと導く。アプリを通じて患者の取り組みや生活習慣の改善状況が医師側にも共有されるため、外来診療の限られた時間内でも効果的なサポートを行うことができるという利点もある。

NASH 治療用アプリの概要(引用:東京大学)

このアプリの臨床試験をNASHと診断された患者19人を対象に実施したところ、48週間の介入で診療ガイドラインが推奨する減量率(体重の7%)を上回る平均8.3%の体重減少を達成。肝組織の脂肪化や炎症、風船様変性(水分が貯留して肝細胞が膨らんだ状態)などで評価される「スコア」も試験開始時に比べて有意に低下した。肝硬変の程度を示す「肝線維化」が進行したNASH患者は肝がん発症のリスクが高まるが、試験開始前に中等度以上の線維化が見られた患者の58.3%で線維化が有意に改善した。

肥満による他疾患の予防にも

デジタル療法は糖尿病やうつ病などに対して高い治療効果があることが世界的にも報告されており、国内では2020年にニコチン依存症の治療用アプリが世界で初めて保険収載(保険適用と価格の決定)された。さらに22年には高血圧の治療用アプリが保険収載されるなど、徐々に活用の場が広がっている。

NASH治療としてデジタル療法の有効性を示したのは今回の研究が世界初となる。研究グループは「認知と行動の改善を介した減量によってNASHの治療を行えるようになれば、肝硬変や肝がんだけでなく肥満が原因で生じる他の疾患の予防にもつながり、医療費削減への貢献も期待できる」とし、今回の試験結果を踏まえ、今後NASHに対する新医療機器としての薬事承認を目指して第Ⅲ相試験(多くの患者を対象にした有効性・安全性の実証)の実施を検討するとしている。

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