東京都千代田区は31日、一般会計を750億4300万円とする令和5年当初予算案を発表した。前年度当初比8・5%増で、過去最大となった。これまで注力する子供・子育て関連の支援策、地域経済の活性化策などに加え、新たに「デジタル」を活用したさまざまな施策に取り組む。1つの目玉は災害対策だ。
今年は死者・行方不明者約10万5千人を数えた関東大震災(大正12年)から100年の節目。また、平成23年の東日本大震災では、首都圏でも多数の帰宅困難者が発生し、大きな混乱が生じたことは記憶に新しい。
千代田区は夜間人口に比べて17倍を超える圧倒的多数の通勤・通学者を抱える。発災時間帯によっては区職員らのマンパワーが大きく不足することが懸念される。この課題にデジタル技術で挑む。
具体的には大規模オフィスビルが立ち並び、複数の鉄道が乗り入れる東京駅周辺の大手町・丸の内・有楽町地区(大丸有地区)での効果的な情報発信システム。同地区に複数のオフィスビルなどを所有する三菱地所が区などと連携して開発、実証を進めていた「災害ダッシュボード Beta」を活用する。
区はこのシステムに、区内103カ所ある帰宅困難者受入施設の開設状況をリアルタイムで表示できるよう開発を進める。避難者や帰宅困難者向けに、専用ウェブサイトのほか、地区内に約100台程度あるデジタルサイネージを使い、情報を発信する。
5年度予算案には関連費用とし約130万円を計上した。また、区の施策と並行し三菱地所でもライブ映像の放送などについても実証し、効果を検証する予定だという。
樋口高顕区長は「まずはエリアを絞って取り組みやすい地域から始める。情報が手元に届くよう、チャンネル(経路)を用意していく必要がある」と述べた。