令和3年の経済センサスによると、千葉県における医療用機械器具・医療用品製造業の製造品出荷額等は約441億円で全国10位となっている。産業細分類別に内訳をみると、全国で構成比の最も大きい「医療用機械器具製造業」は全国14位(204億円)だが、手術用品、外科用品などが該当する「医療用品製造業」が211億円と、全国トップ(シェア16・5%)となっている。
医療機器・用品分野は、国際競争も激しく、品質が関係法令で厳格に管理されるため、高い技術力が求められる分野ではあるが、少量多品種であるため中小企業の参入が多いことも特徴である。
県内の医療用品製造業は、レーザーファイバーのカバーにおいて高い世界シェアを誇るハギテック(四街道市)、鉗子(かんし)などの外科手術用具を製造するホープ電子(松戸市)、内視鏡手術トレーニングキットを開発・製造するファソテック(千葉市)など、高度な技術を有する中堅・中小企業が牽引している。
県では、中小企業による健康・医療分野への参入支援のため、ちばメディカルネットワークのコーディネータによる製品化・事業化のサポートや健康医療ものづくり製品の研究・開発などに係る経費助成を行っており、こうした施策も奏功しているという。
医療機器開発を巡る動きとして、柏の葉キャンパス地区では、国立がん研究センター東病院を核として、中小機構関東本部(東大柏ベンチャープラザ)や三井不動産、スタートアップ支援組織であるTXアントレプレナーパートナーズなどが連携し医療機器開発のイノベーションエコシステムの構築を目指し、医療機器ベンチャーと医療機関とのマッチング事業などが継続的に展開されている。また、千葉大では医工学の研究機関であるフロンティア医工学センターや病院内で新たな医療機器開発を目指す千葉大医学部附属病院メドテック・リンクセンターにおいて、医工連携による新たな医療機器開発が進展している。
医工連携においては、企業の技術力に加え医療現場のニーズ把握も重要となるが、柏の葉や千葉大の事例のように、県内では企業と医療機関の連携が徐々に進みつつある。医療機関、大学、研究機関の集積・連携と行政支援を追い風に本県における医療機器産業の更なる発展に期待したい。
(ちばぎん総研主任研究員 福田宏治)