関西電力が競合関係にある新電力の顧客情報を、子会社の関西電力送配電のシステムから不正に閲覧していた問題で、関電が31日付で設置した緊急対策本部。森望社長は記者会見で「当社が信頼を失っていることは間違いなく、回復をいかにしていくかは大きな課題」との認識を示し、対策本部で「根底にまで手を突っ込んだ調査をしたい」と全容の解明にみずから指揮をとる姿勢を強調した。
「聞いた瞬間、(電気事業法の)規制に抵触すると思ったので愕然(がくぜん)とした」。森社長は不正閲覧について報告を受けた際の「衝撃」をそう語った。
関西送配電のこれまでの調査では、昨年4月1日~12月19日に社員ら約千人が約4万件の家庭向け契約の情報を不正に閲覧していたことが判明し、件数はさらに増える見通しだ。
9~12月に閲覧した社員のうち、問題になり得ると認識していたのは42・7%に上り、情報の一部はオール電化の勧誘などに悪用されていた。森氏は「コンプライアンス(法令順守)を業務の効率化より優先するという意識の徹底が不十分だった」と認めた。
関電は令和元年9月、原子力発電所の地元関係者からの金品受領を公表し、2年4月に弁護士らによる「コンプライアンス委員会」を設置した。しかしその後、電力自由化を巡るカルテルの疑いで公正取引委員会の調査を受け、不正閲覧も明らかになった。
企業風土の改善が本当に進んでいるのか疑問が示される事態。森氏は「改革の取り組みは一定の成果があったものの、道半ば。われわれに何が足りないのか、しっかり取り組まないといけない」と述べた。
関電と関西送配電は電力・ガス取引監視等委員会の立ち入り検査を受け、監視委は処分を検討している。自ら厳しい姿勢を示すよう迫られる中での対策本部設置という印象はぬぐえず、関電が自浄作用をどこまで働かせるのかが問われる。(牛島要平)