国会は30日から3日間の日程で、衆院予算委員会で岸田文雄首相や全閣僚が出席する令和5年度予算案の実質審議がスタートする。立憲民主党、共産党などの野党は防衛力強化に伴う「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有や防衛費増額に伴う首相の増税方針、原発の運転期間延長、子供・子育て政策を中心に、一問一答形式となる予算委の質疑で攻勢を強める構えだ。
「北朝鮮はミサイルの開発能力を大幅に上げている。一挙に撃たれたときに、国民の生命・財産を守ることができるのか。抑止力・対処力を持つため、専守防衛の範囲内での反撃能力が必要だ」
自民党の茂木敏充幹事長は29日のNHK番組で、反撃能力保有の必要性を強調した。これに対し、立民の岡田克也幹事長は「相手国に攻撃能力を持つということは(自衛隊と米軍の役割分担の)盾だけではなく、矛の一部を持つということだ。専守防衛と整合性のある説明ができるのか」と疑問を呈した。
予算委の最大の焦点は、岸田政権が昨年末に閣議決定した国家安全保障戦略など「安保3文書」で示された防衛力強化のあり方だ。とりわけ反撃能力に関しては、共産も「憲法9条で絶対許されない海外での武力行使だ」(小池晃書記局長)と主張し、立民とともに反対の論陣を張る。また、防衛力強化に向けた政府の増税方針に関しても野党は撤回を求めており、首相に早期の衆院解散・総選挙を迫るなど政権への揺さぶりを強めそうだ。
首相が重視する子供・子育て政策では、児童手当の拡充も焦点だ。25日の代表質問で首相に児童手当の所得制限撤廃を提案した茂木氏は29日のNHK番組で、自民が旧民主党時代に所得制限を主導した経緯との整合性に関し「反省する。所得制限はなくすべきという方向でまとめたい」と説明した。野党は所得制限撤廃に賛成しており、予算委で首相が新たな方向性が示す可能性もある。
今国会は会期中の4月に統一地方選や千葉5区、和歌山1区などの衆院補選を控える。予算委での論戦は今後の政治決戦の前哨戦の様相を帯びることになりそうだ。(永原慎吾)