柔の道、寄り添う

グアムに家族旅行、「頑張って」立が有名人に

産経ニュース
三恵子さんを囲んで写真に収まる立(右)と一郎さん(左)。家族3人、グアムで年始を迎えた(斉藤三恵子さん提供)
三恵子さんを囲んで写真に収まる立(右)と一郎さん(左)。家族3人、グアムで年始を迎えた(斉藤三恵子さん提供)

年末年始は、私と長男の一郎、次男で柔道男子100キロ超級世界選手権代表の立の3人でグアムでのんびりとした時間を過ごしました。主人の仁が生前、まとまった休暇が取れるのがこの時期しかなく、ハワイやグアムに行く家族旅行は恒例行事でした。主人が亡くなってからも、家族3人での旅行は続き、コロナ禍のここ数年を除いてはだいたいは旅先で新年を迎えています。

今回の行き先は立のリクエストで決まりました。日本では自分に合ったサイズの服やスニーカーがなかなか見つからないと嘆く立は、何点かお気に入りの品を買うことができたようでした。かつて家族4人で行った水族館は閉まっていましたが、水族館前はいつも記念撮影をしていた場所。今回は「一人、足りないね」と主人を懐かしみつつ、家族3人の思い出にと、カメラに収めました。

現地で驚かされたことがあります。立がちょっとした〝有名人〟になっていたことです。観光に訪れていた日本の方から、立が写真撮影や握手を求められる機会がたくさんありました。主人の生前にはよく目にした光景ですが、立がそんな存在になっているとは想像もしていませんでした。主人が生きていたら「調子に乗るなよ。お前はまだまだだぞ」とくぎを刺していたかもしれませんが、多くの人たちが「頑張って」と応援してくれる様子に、立も「やばい。ちゃんとしていないと」と焦りつつもうれしそうでした。

現地には韓国からの観光客も多く、1988年ソウル五輪男子95キロ超級で金メダルを獲得した主人のことを覚えていてくれる人たちもいて、「お父さんのこともよく知っているよ」と声をかけてくれました。

立にとって、昨年は飛躍の1年でした。春に全日本選手権を初制覇。10月に初出場した世界選手権は決勝で敗れましたが、年末にイスラエル・エルサレムで開催された格付けの高いマスターズ大会を制し、全日本柔道連盟の強化委員会で、今年5月の世界選手権代表に選出されました。

柔道マスターズ最終日 男子100キロ超級決勝でラヒモフを抑え込む斉藤立(上)=エルサレム(国際柔道連盟提供・共同)

マスターズ大会はけがを乗り越えての頂点でした。その約3週間前に日本で開催されたグランドスラム東京大会はけがで欠場せざるを得ませんでした。詳細は控えますが、稽古中の乱取りで負傷し、一時は松葉づえを使わないといけない状態でした。立は欠場を悔やんだものの、マスターズ大会に間に合わせて優勝することで、2年連続となる世界選手権代表入りを確実にしようと気持ちを切り替えていました。

私も少しでも役に立てればと、東京へ出向いて食事面などをサポートしました。栄養士さんからアドバイスをいただき、けがの回復が少しでも早まればとメニューを工夫しました。

立はけがで満足な稽古が積めない中でも、昨年の世界選手権で課題として痛感させられた海外選手に対する組み手の研究や寝技対策に励んでいました。実は主人からも膝の負傷で稽古ができないとき、「今できることをやろう」と寝技などを徹底的に強化したという話を聞いていました。立はそのことを「わかってる」と話していたので、同じように取り組んでいたのだと思います。

けがの状態は幸いなことに、医師から「4倍のスピードで回復しています」と驚かれるほどで、何とか試合にも間に合いました。私も世界選手権に続いて現地で応援しました。素人の私からみても、立の柔道は「幅」が広がったように見えました。組み手対策や寝技の強化が功を奏したようで、決勝も寝技で世界ランキング1位の選手に一本勝ち。5試合を勝ち抜く姿に、苦しいときに頑張ったかいがあったと胸が熱くなりました。

試合会場では立の試合になると、外国人の観客からも「SAITO!」と応援する声が何度も響きました。以前は柔道会場に足を運ぶと、関係者の方から「斉藤仁先生の妻」として紹介されることが多かったのですが、昨年の世界選手権からは「斉藤選手のお母さん」と呼ばれるようになってきました。立が「斉藤仁の息子」ではなく、「斉藤立」として認められてきているからだと思います。

初詣は、グアムから帰国してから立と一緒に「足の神様」として知られる大阪府豊中市の服部天満宮に行き、願いを絵馬にしたためてきました。

来年の夏にはパリ五輪が開催されます。今年は五輪代表を目指す立にとって、とても大事な1年です。立にけががなく、家族3人が健康に過ごせますように-。私の何よりの願いです。

五輪2連覇の斉藤仁の妻として、パリ五輪を目指す次男・立の母として、斉藤三恵子さんが柔道一家をめぐる話をつづります。

斉藤三恵子(さいとう・みえこ) 1964年、大阪府生まれ、大学卒業後、海外の航空会社に就職。フランスの航空会社で客室乗務員をしていた1993年に斉藤仁氏と出会い、97年に結婚。長男・一郎氏、次男・立の母。

斉藤立(さいとう・たつる) 体重無差別で争う全日本選手権は2019年に史上最年少の17歳1カ月で初出場し、22年に初優勝。男子100キロ超級で18、19年全国高校総体、18年全日本ジュニア体重別選手権優勝。21年のグランドスラム・バクー大会でシニアの国際大会初制覇。男子95キロ超級で五輪2連覇の故斉藤仁氏と三恵子さんの次男。一郎さんは兄。得意技は体落とし、払い腰。東京・国士舘高―国士舘大3年。191センチ、160キロ。20歳。大阪府出身。

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