イワナの稚魚は、水底で動かない状態から泳ぎだす直前にあくびをする傾向があるとする論文を北海道大学大学院が発表した。定量的な研究をもとに、あくびが魚類の行動変化を活発化させる可能性を実証したのは世界初だとしている。
あくび自体は、人間だけでなく多くの種類の生き物で確認されている。三重大学大学院は昨年2月、水族館のジュゴンがあくびをしているのを発見したと発表した。完全に水中で生活する哺乳類としてはハンドウイルカに次いで2例目だった。
人間などの内温動物(外界の温度変化にかかわらず常にほぼ一定の体温を保っている動物)のあくびには覚醒作用があり、行動の活発化を引き起こすと考えられている。その一方で、魚を含む外温生物(外部の温度により体温が変化する動物)が示す「あくびに類似した行動様式」については研究が進んでおらず、内温動物のあくびと異なるものだと見なされてきた。
同大学院水産科学院の山田寛之氏(博士後期課程3年)と同大学院水産科学研究院の和田哲教授は、水槽に入れたイワナの稚魚41匹の行動を観察。10分間の動画をもとに、あくび、水底に身体を接して動かないでいる着底行動、遊泳行動の関係をデータ化した。
検証の結果、23匹が合計48回のあくびをしていた。そのうち32回は着底行動中に行われていて、特に着底行動から遊泳行動に移る直前に集中していることが分かったという。山田氏らは、魚類のあくびの機能が「少なくとも部分的に」人間などが行うあくびと共通している可能性が示唆されたと結論づけて、動物界におけるあくびの起源を理解するのに役立つ研究成果だと述べている。