ドクター和のニッポン臨終図巻

マッコウ鯨「淀ちゃん」 「かわいそう」の裏にある真実 人間が捨てたプラスチックゴミが海獣の死に大きな影響

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マッコウ鯨の寿命は、約70年といわれています。淀ちゃんは、成熟したオスの個体だったとのこと。衰弱して泳ぐ力が弱まり、群れからはぐれて川にのぼってしまったのではないかと専門家は推測しているようです。

海獣学者の田島木綿子さんが昨年出版した『海獣学者、クジラを解剖する。』(山と渓谷社)という本が、実に面白かったので紹介します。鯨をはじめ海洋生物が陸に打ち上がるケースは全国で年間300件ほどあり、田島さんはその多くに立ち合っているそうです。いわば、海獣のお看取りをしている人。大きな鯨の死体は、その処理に大変なお金と手間がかかります。やっかいな粗大ごみなのです。しかし海獣の死には、人間が捨てたプラスチックゴミなどが大きな影響を与えているとも書かれていました。

〈人間社会の営みが、他の生物や環境を脅かす結果になっているとしたら、極論として、「もう私たちが絶滅するしかないねえ」と、周囲の研究者たちとよく話す〉という本書の一節が印象的でした。かわいそう! と叫ぶなら、その生き物の命を脅かしているのがわれわれ人間であることを自覚せねばなりません。

■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。東京医大卒業後、大阪大第二内科入局。1995年、兵庫県尼崎市で長尾クリニックを開業。外来診療から在宅医療まで「人を診る」総合診療を目指す。この連載が『平成臨終図巻』として単行本化され、好評発売中。関西国際大学客員教授。

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