冬本番。お鍋がおいしい季節ですね。関西にはハリハリ鍋という料理があります。関東の人にはなじみがないかもしれません。ハリハリ鍋の具は、鯨の肉と水菜。鰹だしにしょうゆを効かせたスープで煮るだけの素朴な鍋。山椒や七味をかけていただきます。
食糧難だった戦後から高度成長期まで、鯨肉は日本人の貴重なタンパク源でした。鯨の竜田揚げは昭和世代の給食の定番でもありました。最盛期の1960年代には年間20万トンもの消費量だったとか。しかし1980年代に商業捕鯨が禁止となり、高級食材に変わります。そんな、鯨肉が大好きな、往診先のおじいちゃんが、「せんせい、テレビ見た? 淀ちゃんが死んでしもうたわ」と悲しそうに言うので、妙な気持ちになりました。
死にかけている個体は、かわいそう。だけどお肉になったら、おいしそうと感じる人間は、なんと矛盾した生き物か。
1月9日、大阪市の淀川河口付近に体長15メートルほどのマッコウ鯨が迷い込んでいるのが発見されました。あまり泳いでいる様子はなく、じーっと同じ場所に留まっていました。その後、テレビがトップニュース扱い。いつのまにか淀ちゃんと名付けられ、「助けてあげて!」という市民の声も高まって大騒ぎだったわけですが、13日に死んでいるのが確認されたとのこと。享年は不明です。