メキシコの実話をベースに巨大化された誘拐ビジネスの闇に迫った映画「母の聖戦」の緊迫感にたじろいだ。娘を取り戻すためわが身を投げ打って組織に挑んだシングルマザーの体験ルポを見ているかのようだ。
年間6万件にも及ぶ誘拐事件が頻発しているというメキシコの中でも、舞台となる北部はコカイン取引の拠点があるため、とくに物騒らしい。
シングルマザー、シエロのひとり娘ラウラは年頃の反抗期。彼氏とデートに行ったきり、消えてしまった。シエロは誘拐犯に脅され、なけなしの20万ペソ(約135万円)の身代金を払うが、娘は帰らない。警察に取り合ってもらえず、元夫や地元の顔役も頼りにならない。自力で娘を奪還することを胸に誓い、捨て身で調査に乗り出す。そんな中、軍のパトロール部隊を率いるラマルケ中尉が情報提供と引き換えに、娘の救出への協力を持ちかけ、ともに組織に乗り込む危険な賭けに出た。