核兵器の開発などを全面的に禁じる核兵器禁止条約(核禁条約)は22日、発効から2年を迎えた。政府は核保有国が含まれない条約は実効性が伴わないとして、不参加の立場を堅持する。ウクライナを侵攻するロシアが核の恫喝を行い、核を巡る現実は厳しさを増す。政府は昨年改定した国家安全保障戦略に核軍縮・不拡散の方針を明記し、核保有国を巻き込んだ現実的な対応を強化する考えだ。
「現実を変えていくために核兵器国の協力が必要だ。核兵器国を関与させる形で現実的かつ実践的な取り組みを進める」。林芳正外相は20日の記者会見で、核禁条約に加わらない理由を重ねてこう説明した。
核禁条約は2017年の国連会議で122カ国・地域の賛成を得て採択され、21年1月に発効した。核兵器の実験や保有、使用などを禁じ、68カ国・地域が批准している。一方、中国やロシア、米国などの核保有国は条約に反発する。核抑止力を否定する「使用による威嚇」も禁じ、米国の拡大抑止に入る日本など核保有国の「核の傘」に依存する国も参加していない。
このため、政府は米露英仏中を核兵器国と定めて核軍縮を義務付ける「核拡散防止条約」(NPT)体制の強化を重視する。岸田文雄首相は昨年8月、米ニューヨークで開かれたNPT再検討会議で、核廃絶に向けた行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」を発表し、核戦力の透明性向上などを訴えた。
国家安保戦略では、「NPTを礎石」と位置付け、軍備管理・軍縮・不拡散の取り組みを一層強化すると明記した。ロシアの核による威嚇や中国の核弾頭増強、北朝鮮の核開発などが深刻化する中、日本が核廃絶に向けた国際的な取り組みを主導する国家の意思を示した形だ。
首相は5月に広島市で開く先進7カ国首脳会議(G7サミット)で、核軍縮と不拡散を主要なテーマとしたい考えだ。今月、訪問先の英国で「国際的な機運を再び盛り上げる貴重な機会にしたい」と決意を語った。政府関係者は「G7首脳が広島から強いメッセージを発信し、軍縮外交の象徴的な成果を出せればいい」と語る。(岡田美月)