岡山県倉敷市の中学3年生、梶谷恭暉(かじたにみつき)さん(14)が昨年11月13日に自宅から出かけたまま戻らず、行方不明となっている。翌日の14日に生口(いくち)島(広島県尾道市)の交番に所持品のスマートフォンと本が拾得物として届けられた。岡山県警倉敷署で行方を捜しているが2カ月が経過しても、その後の詳しい足取りはわかっていない。両親は「事件事故やトラブルに巻き込まれておらず、元気でいてくれたらそれだけでいい」と願っている。
生口島でスマホ発見
両親によると、恭暉さんは昨年11月13日の日曜日、午後2時ごろに母親が買い物に出かける際「塾(の自習室)に行く」と言って1人残り、母親が3時過ぎに帰ってきたときには姿が無かった。
午後5時半ごろに恭暉さんから交流サイト、LINE(ライン)で「6時ごろ帰る」と連絡が入ったが時間になっても帰ってこず「まだですか」との問いかけは既読にならなかった。母親は近くの公園や商業施設などを捜し回ったが見つからず、14日午前2時過ぎ、倉敷署に行方不明者届を提出した。
生口島の路上で拾われて近くの交番に届けられたスマホと本2冊が「恭暉さんのものでは」と夕方、倉敷署から母親に連絡があった。スマホはバッテリーが半分以上残っていて位置情報はオフになっていた。
生口島での足取りは分からなかったが、その後、広島県三原市のJR三原駅や三原港近くの防犯カメラに恭暉さんと似た人物が映っていたことが判明し、母親がJR倉敷駅周辺で恭暉さんの自転車を発見した。
これらの情報から、恭暉さんは自転車で倉敷駅にいき、そこから電車に乗って三原駅へ。そこから徒歩で三原港に行き、フェリーで生口島に到着したのではないか、と推測されている。
生口島には校外学習で行った経験があるというが知り合いや土地勘はないはずという。
母親は「校外学習で行っていない場所に立ち寄っている。船酔いしやすい体質なのに自らフェリーを選んだのは不思議。なぜ生口島に行ったのか、説明がつかない」と話す。
軽装で外出
倉敷署などによると、身長約170センチ、体重約65キロ、黒色の短髪に黒縁メガネ、顔立ちや雰囲気は少し大人びて見える感じもあるという。黒い無地の長袖の上着に白または灰色の長ズボン、カーキ色のサンダルという軽装だった。ポケットにスマホと財布、本を入れ、天候が悪かったので傘を持って出かけていたとみられる。塾に持っていくリュックは自宅に残されたままだった。
昨年12月に公開捜索に切り替え、倉敷市をはじめ岡山市や広島県内、修学旅行先だった大阪府などで両親やボランティアらがチラシを配り、情報提供を呼びかけてきた。
島への到着推定時刻が夕方以降で人通りは少なかったと考えられる。両親は、ヒッチハイクなど何らかの手段を使って島外に出ている可能性もあるとして「11月13日以降に生口島や周辺の島にいた方は動画や写真、ドライブレコーダーなどに手がかりになるものが残っていないか確かめてほしい」と訴える。
目撃情報30件
恭暉さんの性格について母親は「話し好きで人当たりがよく、お年寄りにも好かれ、小さな子の面倒みもよい。けっこう行動的で1人でも判断して動ける。3年間、バスケ部の部活動をやり抜き、模試の成績も上げた頑張り屋さん」と話す。今までふらっといなくなることは無かった。ただ、いなくなる数日前から進路のことで悩んでいた様子だったという。
母親は「体はだいじょうぶですか。食事は取れていますか。命の危険にさらされているならすぐにでも助けに行きたい。元気かどうかだけでも知らせてきて。すぐ帰りたくないならそれでもいい」と心配する。
父親は「騒いだようになるのが本人にとっていいのか分からないが、ささいな情報でも欲しい」と、苦悩の色が浮かぶ。
今月5日には、静岡県伊豆の国市で約1カ月行方不明だった中学3年の少年が無事保護されたニュースが報じられ、両親は勇気づけられているという。
倉敷署には目撃情報などが約30件寄せられている。三宅功拡副署長は「あらゆる可能性を排除せず情報を丹念に調べている」と話している。情報提供は倉敷署(086・426・0110)まで。