難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者への嘱託殺人罪などで起訴された元医師、山本直樹被告(45)が平成23年に母親らと共謀し、父親=当時(77)=を殺害したとする殺人罪の裁判員裁判の論告求刑公判が20日、京都地裁(川上宏裁判長)で開かれ、検察側は懲役20年を求刑した。判決は2月7日に言い渡される。
これまでの公判で、検察側は「(精神疾患で入院していた)父親の厄介払いが動機だった」と指摘。山本被告が母親の淳子被告(78)、知人で医師の大久保愉一(よしかず)被告(44)=いずれも殺人罪で起訴=と交わしたメールから、父親が亡くなる約1カ月前から殺害に向けた具体的な行動や準備を進めていた経緯が明らかになった。弁護側は「山本被告は殺害計画の中止を決めたが、大久保被告が単独で実行した」と無罪を主張している。
17日に行われた被告人質問で、山本被告は23年1月下旬から大久保被告と具体的な殺害計画を練り始めたと説明。ただ計画の実行当日に中止を決め、大久保被告にも了承を得たが、大久保被告が東京都内のマンションの一室で父親と2人きりになった数分のうちに殺害が実行されたと述べた。
山本被告は「(安楽死を肯定し高齢者の延命措置に否定的な)大久保被告は証拠が残らない殺人の実験台が必要で、父が巻き込まれた」と主張した。
起訴状によると、山本被告は淳子被告、大久保被告と共謀して23年3月5日、都内などで父親の靖さんを何らかの方法で殺害したとしている。