【ノーサイドの精神】
イングランド代表のエディー・ジョーンズ監督が昨年12月に解任されたと思ったら、母国のオーストラリア代表監督に就任した。前任のデーブ・レニー監督は解任。W杯イヤーに入り、いろいろと動き出した。
イングランドといえば、口さがない大衆紙の辛口ぶりがつとに有名。どんな論調なのか、探ってみた。
サン紙はイングランドのファンのツイートをさらっていた。「エディーはイングランドのチームについて全てを知っているからね」「イングランドはオーストラリアに負けるんじゃないの」。エディーさんの後任のスティーブ・ボーウィック監督も、一緒に仕事をした仲間。性格まで知り抜かれている。
デーリー・メール紙はオーストラリアのシドニー・モーニング・ヘラルドの記事を引用する形で「イングランドのことは考えていない。最も重要なことは、オーストラリアが本当にいいプレーをし、それを一貫して継続することだ」と、エディーさんが語ったとしている。
今年9月開幕のW杯フランス大会で、オーストラリアは1次リーグC組に入り、イングランドはD組。どちらかが1位でもう片方が2位で1次リーグを通過した場合、準々決勝で激突する(それ以外の場合、当たるなら決勝)。イングランドの動向には、同じ組の日本も関わってくる。いずれにせよ、両紙ともエディーさんより、イングランドに矛先を向けているように感じた。
エディーさんの任期は2027年まで。27年にはオーストラリアでW杯が開かれる。その前の25年には英国系4協会の代表である「ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ」がオーストラリアに遠征する。エディーさんはワラビーズを率いて迎え撃つわけで、オーストラリア協会はエディーさんに相当な信頼を寄せている。レニー体制で、昨年は14戦してわずか5勝しかできなかったのだから、それも仕方ないだろう。
ところで昨年7月、イングランド代表がオーストラリアに遠征し、シドニーでオーストラリア代表を21-17で破った後、地元のファンがエディーさんに「裏切り者」などと罵声を浴びせ、エディーさんが激高するハプニングがあった。そのあたりのわだかまりは解消できているのか。根に持つタイプのエディーさんだけに〝雪解け〟は必要な気がする。
まあ、オーストラリア人は概してイングランド人よりおうようだから、ワラビーズの成績が上がってくれば、称賛の声が満ちてくるのだろうが。W杯開幕まで、エディーさんの周辺からは目が離せない。(田中浩)