東京電力福島第1原発事故を巡り業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電元会長の勝俣恒久被告(82)ら旧経営陣3人について、東京高裁は18日、1審東京地裁に続き、全員を「無罪」とする判決を言い渡した。旧経営陣の刑事責任が認定されることを期待していた関係者からは、落胆の声が漏れた。
午後2時からの判決を前に、東京・霞が関の東京高裁周辺には午前中から傍聴券などを求めて多くの人が集まった。
事故後、第1原発近くの双葉病院(福島県大熊町)に入院していた父を避難中に亡くし、現在は水戸市に住む菅野正克さん(78)は、判決を見届けようと駆け付けた。知人の僧侶から最近、父の13回忌の問い合わせを受けたといい「もうそんなに時間がたってしまったのかと思った。故郷への帰還を夢見ながら亡くなった方の怒りや無念を反映してもらいたい」と話した。
福島県田村市から金沢市に避難している浅田正文さん(81)は、東電の旧経営陣に13兆円超の賠償を命じた昨年7月の東京地裁の株主代表訴訟の判決も傍聴。「言い渡しの瞬間は雷に打たれたような気持ちだった。今回も、良識ある判決を出してくれるのを祈りたい」と語った。
午後1時過ぎには、旧経営陣3人のうち、副社長の武黒一郎被告(76)と武藤栄被告(72)が緊張した面持ちで高裁に入った。勝俣被告は体調不良を理由に出廷を取りやめた。
午後2時過ぎ、3人に無罪を言い渡した1審判決を支持し、控訴の棄却が法廷で言い渡されると、支援者の女性が高裁前で沈痛な面持ちで「全員無罪 不当判決」と書かれた紙を掲げ、周囲からは落胆の声が上がった。
マイクを握った女性が「全員無罪の不当判決を私たちは認めない!」と声を上げ、周囲の支援者らは同様に判決に対する批判を繰り返していた。