藤浪晋太郎投手(28)が移籍する米大リーグ、オークランド・アスレチックスとはどんな球団か。歴史と現状を、米国在住の丹羽政善通信員が紹介する。最終回はアスレチックスは効率がいい球団? というお話。
作っては壊し、作っては壊し―。2000年代半ば以降、アスレチックスはドラフトもしくはトレードで獲得したプロスペクト(若手有望選手)に早くからチャンスを与えて育成した。成長すればフリーエージェント(FA)になる前にトレードに出し、またプロスペクトを獲得するということを繰り返した。
ジョシュ・ドナルドソン(ヤンキース)、ヨエニス・セスペデス(メッツなど)、マット・オルソン(ブレーブス)、フランキー・モンタス(ヤンキース)らはそうしてチームに来たが、やがて去った。セイバーメトリクス(統計学を利用したデータ分析)を駆使し、独自の選手評価、戦術をとる「マネーボール」を変わらず実践し「マネーゲーム」もしない。そこは徹底している。
かといって、勝てないわけではない。ア軍は過去11シーズンで6度もプレーオフに出場している。同地区のマリナーズは昨年、ワイルドカードでポストシーズンに進んだが、21年ぶりのことだった。エンゼルスは14年を最後にプレーオフから遠ざかる。資金を注ぎ込みながらもがく彼らと違い、実に効率的だ。
今年いっぱいは土台作りと予想されているが、オルソンらのトレードで獲得した若手がそろそろ芽を出すときであり、ア・リーグ西地区を攪乱(かくらん)する可能性はありそうだ。
ところで、アスレチックスのファンは少々行儀が悪いことで知られている。2001年にマリナーズに入団したイチロー(現会長付特別補佐兼インストラクター)も「コインを頭にぶつけられたり、アイスが飛んできた」と話したことがある。現在、日本の野球殿堂博物館にはマリナーズでプレーしたケン・グリフィーのグラブが展示されているが、手首の革のストラップには数枚のコインが挟まっている。彼が、オークランドで稼いだ小銭だ。(おわり)