南海トラフ地震が発生すると大阪など近畿圏で約300万人の帰宅困難者が発生すると想定されている。このため、大阪市中央区難波(ミナミ)を拠点とする企業、団体などが参加する「ミナミまち育てネットワーク」は17日、ミナミで、帰宅困難者を支援する実証実験を実施した。
訓練は、南海トラフ地震によって震度6の揺れが起こり、渋滞や鉄道の運行停止が発生したとの想定のもと行われた。訓練関係者は南海難波駅に直結したビル「大阪なんばスカイオ」の一室に参集。ミナミの広場や商業施設など3カ所で、ピクトグラムで表現した「帰宅抑制」をデジタルサイネージ(電子公告・看板)で呼びかけた。
続いて、鉄道の運行状況や駅の混雑状況、使用可能なトイレ、ホテルなど一時滞在施設の受け入れ状況などをデジタルサイネージで表示した。
同ネットワークは昨年1月、大阪市内の駅や商業施設など10カ所で、一斉帰宅抑制を呼びかけるピクトグラムを日英語でデジタルサイネージ(電子看板・広告)で表示する実証実験を始めた。
同ネットワークは「今回は平成23年東日本大震災時の首都圏の状況を想定し建物倒壊や火災などの被害や電気など情報発信のためのインフラに大きな影響がない前提で、帰宅困難者にとって必要な情報を発信することをねらいとした」。
昨年の実証実験から助言している京都大防災研究所の矢守克也教授(防災心理学)は「多くの帰宅困難者が発生する規模の災害では、停電によってデジタル環境に支障が出たり、建物被害や火災、けが人発生などトラブルが起こりうる。こうした状況下でどう情報発信するかの工夫が求められる」と指摘している。
都市防災が専門の廣井悠・東京大院教授は「首都直下や南海トラフ地震のような大災害になると公的機関の対応は遅れがちになる。人が滞留する駅やその周辺の事業者が協力し、一時滞在場所などの情報を提供したりする対応が望まれる。外国人観光客が多い大阪、京都では観光客に宿泊所へ戻ってもらうための支援も必要だ」と話している。