難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者への嘱託殺人罪などで起訴された元医師、山本直樹被告(45)が平成23年、母親(78)らと共謀し、父親=当時(77)=を殺害したとする殺人罪の裁判員裁判の第4回公判が17日、京都地裁(川上宏裁判長)で開かれ、前日に引き続き被告人質問が行われた。山本被告は23年1月下旬ごろから「(事件当日の)3月5日を目指して殺害の準備をした」と述べ、共犯として起訴されている知人で医師の大久保愉一(よしかず)被告(44)からの指示で計画・準備を進めたと改めて強調した。
この日午前の被告人質問で、弁護側は事件当日までの約1カ月間の山本被告らの行動や殺害計画について聞いた。
山本被告は23年1月13日に精神疾患のため長野県の病院に入院していた父親と面会した際、提案されていた「胃ろう」の造設手術を断るなど、病院側と治療方針が合わず、東京への転院を勧められたと説明。「主治医から転院を持ちかけられ、『これ幸い』と思った」と述べ、父親を退院させて殺害するといった具体的な計画について1月下旬から大久保被告と練り始めたとした。
大久保被告からは、父親にインスリンを注射して体調を悪化させてから殺害し、そのまま火葬場に遺体を運ぶとの計画を持ちかけられ、注射器やインスリンの調達を指示されたという。山本被告は「その計画は雑すぎると思った」とし、さらに大久保被告と詳細を詰め、「大久保被告の指示で死亡届をどう出すかやマンション、布団、車いすの手配をした」と証言した。
山本被告の弁護側は、大久保被告の提案にのって当初は殺害計画に加わったが事件直前に離脱し、大久保被告の単独犯だったと無罪を主張している。
起訴状によると、山本被告は母親の淳子被告、大久保被告と共謀して23年3月5日、父親の靖さんを東京都内などで何らかの方法で殺害したとしている。