女性の社会進出が進む昨今、野球界でもムーブメントが起こっている。女子の競技人口が増加の一途をたどる中、巨人が2021年に女子チームを新設。主将の金満梨々那捕手(23)ら20選手が今月から本格始動した。女子球界はプレー環境の整備が一筋縄ではいかないが、選手用の託児スペースを球場に設けるなど支援態勢を整えて普及を図る。現実と可能性を探った。(取材構成・鈴木智紘)
選手は笑みを絶やさず、グラウンドに明るい声が飛び交う。華やかな雰囲気が女子野球の魅力だ。2021年12月に新設された巨人の女子チームが、さらなる彩りを加える。初代主将を託された金満は「女子野球界のトップとして目標とされるようにやっていきたい」と自覚をにじませた。
平成国際大出身の捕手で国際大会でも実績を残してきた金満、兵庫・神戸弘陵高時代にエースとして全国制覇した島野ら1期生は4人。昨年の選考を突破した2期生16人が加わり、20人編成で今月から本格始動した。プロ野球12球団では西武、阪神に続き3球団目の女子チーム創設。関東女子硬式野球連盟主催のヴィーナスリーグなどを勝負の舞台とする。
全日本女子野球連盟によると、女子硬式の国内競技人口は21年時点で2533人。減少傾向にある男子と対照的に増加の一途をたどる。とりわけ高校の普及率は顕著だ。全国高校女子硬式野球連盟の加盟校数は15年の19校から昨年は51校まで増え、21年には全国高校女子選手権の決勝が甲子園で初開催された。
着実に裾野が広がっている一方、ままならない現実もある。島野が打ち明ける。
「小学生の頃は女子野球に大きな夢を持てずにいて、ソフトボールに変えようとか野球をやめようと思ったこともあった。実際にやめた子もいた」
プレーできる環境は限られ、プロチームは存在しない。「大学生のときはグラウンドを借りることに必死だった」と金満。巨人の女子チームも例外ではない。メンバーの多くは球団が運営する野球塾「ジャイアンツアカデミー」での指導で収入を得ながら生計を立て、事務職に就く選手や大学に通いながら白球を追う選手もいる。20人そろって練習するのは難しく、平日は日中と夜間の2部練習を行う。
明確な課題がある一方、全日本女子野球連盟の山田博子会長(51)は女子の普及が男子にも波及すると期待を寄せる。女子が主要大会を行う際は本部席の一角に託児スペースを設け、選手や指導者らが試合に集中できる態勢を整えている。「子供たちは当たり前におもちゃのボールやバットを持って『ママ頑張れ』って応援している。そういう環境が整ったら男女関係なく広がっていく」と主張した。