警察の取り締まりや対策に加え、銀行やコンビニエンスストアなども協力し、官民挙げて撲滅に取り組んでいる特殊詐欺だが、依然として深刻な被害が続いている。警視庁と産経新聞・ニッポン放送が展開する特殊詐欺根絶に向けた共同キャンペーン「STOP!! 特殊詐欺」では、特殊詐欺の被害防止を担当する警視庁犯罪抑止対策本部の高崎光抑止対策・分析担当管理官に、最近の手口と被害がなくならない背景について聞いた。
狙われるタンス預金
警視庁によると、東京都内で昨年11月末までに確認された特殊詐欺の認知件数の手口の割合は、還付金詐欺(27・5%)が最も多く、次いでオレオレ詐欺(27・4%)、キャッシュカード詐欺盗(22・6%)、預貯金詐欺(18・3%)だった。
還付金詐欺の手口では、役所をかたり「封筒を送っているが、返事がないので電話した。今日までなら手続きができる」などと、切迫感を出すのが特徴だという。
オレオレ詐欺の手口では息子などをかたり「大事な書類が入ったカバンを置き忘れた」との電話が多く、本人と連絡させないよう「携帯電話を落とした」とも言うという。
コロナ禍以降、外出を避けて自宅で現金を保管している人もおり、それを狙う犯罪グループも増えているという。昨年のオレオレ詐欺の被害総額の約5割がタンス預金だとされ、犯罪グループは自宅に現金をいくら保管しているのか細かく確認する「アポ電」をしてから犯行に及ぶ傾向もあるという。
高崎管理官は「金融機関で犯行を阻止される可能性があり、行かせないようにするなど手口が巧妙化している」とする。
だまされないと思わず
特殊詐欺がなくならない背景の1つに、手口の巧妙化や役割の細分化がある。犯罪グループは電話をかける「かけ子」、現金を受け取る「受け子」、現金を引き出す「出し子」など、役割が細分化。末端の受け子らが摘発されても全体像を描いている組織上部の摘発は難しく、グループの壊滅につなげにくいという。
一方で犯罪グループに狙われた人たちが「私や家族はだまされない」と思い込んでしまうことも危険だという。過去にはだまされたふりをして犯人摘発につなげる「だまされたふり作戦」に協力するなど2回見破った高齢者の男性が、3回目にオレオレ詐欺の被害に遭うケースもあった。偶然にも孫が働き始めた地名を出されたことで信じてしまったという。
被害者の多くは、詐欺に遭ったことを警察だけではなく家族にも知られたくないと思う傾向もあり、高崎管理官は「詐欺にだまされるわけがないという思い込みが一番危ない。身近で発生しているということを認識して自分も注意してほしい」と呼びかける。
固定電話は留守電に
被害に遭わないために、高崎管理官は「だまされない環境づくりをすることが重要」とする。
犯罪グループは、電話やメールといった何らかの「接触」手段を端緒にしており、それらの接触機会を断つことが、被害防止の決め手といわれる。最初のアプローチの9割以上は固定電話にかかっている。
高崎管理官は「自宅の電話を留守電にし、必要な電話だけ掛け直すことを習慣づければ被害は防げる。不審なメールにも反応せず通報してほしい。お子さんやお孫さんからも働きかけてほしい」と話す。
還付金詐欺では携帯電話越しにATMの操作をさせるため、警視庁は令和3年4月から「STOP! ATMでの携帯電話」運動として、ATMでは携帯電話を利用しないことをマナーとして定着させるよう推進。利用している高齢者らを見かけた際には、声掛けや通報、設置店舗の職員や店員らに相談することを都民らに促している。
オレオレ詐欺については、銀行や警察がキャッシュカードの提出を求めたり、暗証番号を聞いたりすることはあり得ないとし「相手に絶対に教えない、渡さないようにしてほしい」と強く呼びかけている。
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高崎管理官へのインタビューは、ニッポン放送のポッドキャスト「ニッポン放送 報道記者レポート2023」で、ニッポン放送の藤原高峰記者が詳しく報じています。URLは、https://podcast.1242.com/show/hodo-report/。