ロシアのショイグ国防相は11日、ウクライナでの軍事作戦の総司令官にゲラシモフ参謀総長を任命した。露国防省が発表した。これまで総司令官を務めてきたスロビキン氏は副司令官に降格された。プーチン露政権は、制服組トップを現場責任者とする異例の人事で将兵の士気を高めるとともに、軍事作戦の成果の乏しさへの国民の不満がプーチン大統領やショイグ氏らに向かう事態を避ける思惑だとみられる。
今回の人事の理由について露国防省は、軍事作戦で解決すべき課題が増えており、陸海空軍の連携の緊密化と指揮の効率化が必要になったためだと説明した。
昨年10月に露軍の総司令官に任命されたスロビキン氏は、南部ヘルソン州の州都ヘルソンで孤立していた露軍部隊を撤退させ、戦力を東部に集中させて攻勢を強化するなど現実的な部隊運用に露軍事評論家からは評価する声が出ていた。
スロビキン氏の降格を巡っては、昨年末に東部ドネツク州マケエフカでウクライナ軍の長距離攻撃により多数の露軍兵が死傷した問題の責任を取らされた可能性も指摘されている。
英国防省は11日、露軍の人事について「露軍が直面している状況の深刻さと、軍事作戦が戦略目標に達していないことを明確に示している」と分析。スロビキン氏の権限が大幅に縮小されたのはほぼ確実だとし、これにより露国内の軍事評論家や愛国主義者の間で政権への不満が強まる可能性が高いとも指摘した。