平成23年に母親らと共謀して父親を殺害したとして、殺人罪での審理が京都地裁で始まった元医師の山本直樹被告(45)の裁判員裁判。山本被告は、共謀したとされる知人で医師の大久保愉一(よしかず)被告(44)とともに難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性患者に対する嘱託殺人罪などでも起訴されている。2人は「安楽死」に関心を持っていたとされ、12日の初公判では、山本被告が高齢者らの延命治療に否定的な考えを持つ大久保被告を「一目置く存在」としていたことが明らかになった。
この日、グレーのトレーナーにベージュのズボン姿、髪を短く刈りそろえて入廷した山本被告。弁護側の冒頭陳述では涙を浮かべ鼻をすする瞬間もあった。
山本被告は銀行員の靖さんと教育熱心な淳子被告の次男として奈良市で育ち、灘中高を経て東京医科歯科大に進学。在学中に大久保被告と知り合い、その後、年下にもかかわらず医師免許を取得した大久保被告に対し、一目置くようになったという。
一方、大久保被告は安楽死を肯定する考えに執着を見せていた。24年11月には「『安楽死させてくれ』といわれて従ってしまった医者の気持ちがよくわかる」とツイッターで初めて「安楽死」の言葉を使用。手塚治虫の漫画「ブラック・ジャック」に登場する医師で安楽死を請け負う「ドクター・キリコ」への憧れを表す投稿も重ねていた。
山本被告は安楽死を肯定するような主張は明らかにしていないが、27年、大久保被告はブログで、山本被告と共著で電子書籍「扱いに困った高齢者を『枯らす』技術」を出版すると紹介していた。
山本被告は18年3月には学費滞納で大学を中退したが、厚労省で医師免許の国家試験に携わっていた大久保被告の助言で22年に不正に医師免許を取得。厚労省は令和3年12月に山本被告の医師免許を取り消した。