13日に米ワシントンで開かれる予定の岸田文雄首相とバイデン米大統領による日米首脳会談では、経済安全保障での連携強化についても議論が行われる見通しだ。グローバル化が進み、各国経済の相互依存が強まる中で、ロシアや中国などは敵対する国への輸出を急に止めるなど、経済を〝武器〟に圧力をかける動きをみせている。そのため西側諸国では、信頼できる有志国で半導体や医薬品などの重要物資を安定供給できる体制の構築が喫緊の課題となっており、連携の軸となる日米の議論を世界も注目する。
特に米中の覇権争いが激化する中、首脳会談では対中政策の行方は最大の焦点だ。
首脳会談の〝地ならし〟で訪米中の西村康稔経済産業相は6日、中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区の強制労働を念頭に、製品のサプライチェーン(供給網)から人権侵害を排除するため、日米の関係当局による作業部会を発足。半導体や量子コンピューター、人工知能(AI)などの重要な先端技術全般で産業協力を広げることでも米政府と合意した。
ただ、米国は日本に半導体の対中輸出規制への協力を求めているほか、自国では中国系通信アプリの使用規制なども進めており、首脳会談では対中連携でより踏み込んだ対応を求めてくる可能性がある。その場合は日本企業の対中戦略の見直しも必至とみられ、第一生命経済研究所の西浜徹主席エコノミストは「米中対立は解消されないという前提で考えることが重要で、中国では中国で売るものだけを作るなど、中国事業を本体から切り離すなどの対策が必要だ」と話す。
一方で、岸田文雄首相には日本の立場をしっかりと主張することも求められる。資源に乏しい日本としては、液化天然ガス(LNG)の安定供給確保に向け、米国のさらなる協力は不可欠だ。日本の自動車メーカーに不利となっている米国の電気自動車(EV)購入優遇策についても、是正を求める必要がある。
脱炭素技術の開発競争が激しくなる中、次世代原子炉や水素、アンモニアといったエネルギー分野の研究開発についても、改めて協力を確認する見通しだ。