犯罪最前線

それは1本の電話から始まる 62億円が詐欺集団へ

産経ニュース

自宅に掛かってきた、たった1本の電話を端緒にこれまで老後のためにコツコツとためてきた「資金」などが、一瞬のうちにかすめ取られてしまう特殊詐欺の被害。昨年は11月末までに警視庁管内だけで62億円余りが、高齢者らから吸い上げられ、犯罪グループの手に渡ったとされる。「自分だけは大丈夫だ」。そう信じている高齢者らも被害に遭っているという。どうすれば被害を防げるのか。警視庁は、家族が集まる年始こそ防犯意識を高める機会にしてほしいと呼び掛けている。

「アポ電」が前兆

「自宅に現金はありますか」

「置いておくと、危ないですよ」

都内に住む90代の女性宅にこう電話を掛けてきたのは「警察官」や「金融庁職員」を名乗る男らだった。女性の不安をあおり「現金を預かります」と称して自宅を訪問。約6800万円の大金を手にし、行方をくらました。

犯罪グループは、女性が疑問に思い、誰かに相談する「時間」を与えないために現金の受け取り役が自宅に到着するまでの間、共犯の男が電話をつなぎっ放しにし、会話を続けていたという。

もちろん、被害は高齢者ばかりではない。

《ご利用料金について話したいことがある》

40代の女性に、こうメールが送られてきたのは昨年11月20日のことだった。メールの送り主を見ると《NTT》と記載されていた。女性が記載されていた連絡先に電話を入れると、「個人データ保護協会」と名乗る男が出た。

「携帯電話がウイルスに感染したことで、被害が出ている。補償金が必要だ」

犯罪グループは女性の不安をあおり、1カ月に30回ほど電話をかけてきて、その都度、入金を迫った。女性は言われるがままに入金を続けて、総額約2890万円をだまし取られたという。

被害は氷山の一角?

都内で昨年確認された特殊詐欺の被害は11月末現在で2953件(前年同期比73件減)で、被害総額は前年同期に比べて約3億2千万円も多い62億円超に上るという。被害で最も目立つのは息子や孫らを語り、トラブル名目などで現金の振り込みを求める「オレオレ詐欺」で約4割にあたる24億円超が確認されている。

一方、オレオレ詐欺の被害総額の約5割がタンス預金だとされ、犯罪グループは、自宅に現金をいくら保管しているのかを、細かく確認する「アポ電」をしてから犯行に及ぶ傾向もあるという。

被害者のうち50代以下は全体の5%未満で、高齢者が被害の中心を占めているとされるが、だまされたことを身内らに知られたくないとして被害を警察に申告しない人も少なくなく、実際には被害はもっと深刻だとみられている。

留守電の徹底

被害に遭わない策はあるのか。

犯罪グループは、電話やメールといった、何らかの「接触」手段を端緒にしており、それらの接触の機会を断つことが、被害防止の決め手といわれる。

90代の女性のケースでも自宅に掛かってきた「アポ電」が契機で、タンス預金の約6800万円をだまし取られた。警視庁幹部によると、犯罪グループはATMでの振り込みを使うと他人と接触して犯行を阻止される可能性があるため、自宅に保管しているタンス預金を狙う傾向があるという。

警視庁幹部は「自宅の電話を留守電にし、必要な電話だけ掛け直すことを習慣づければ被害は防げる。不審なメールにも反応せず通報してほしい」と話す。

一方、社会的な理解の必要性も訴える。

警視庁では、令和3年4月から「ストップ!ATMでの携帯電話」運動を展開。ATMでは携帯電話を利用しないことをマナーとして定着させる運動を推進しているほか、万一、ATMで携帯電話を利用している高齢者らを見かけた際には、声掛けや通報、設置店舗の職員や店員らに相談することを促している。

留守電に加え、家族間で電話の際に合言葉を決めることなども有効だといわれている。

警視庁幹部は「年始は家族で集まるいい機会となる。改めて『家族がだまされるかもしれない』という詐欺に対する危機感を共有し、話し合いをしてほしい」と呼びかけている。(宮野佳幸、塔野岡剛)

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