自衛隊唯一の落下傘部隊である陸上自衛隊第1空挺(くうてい)団が習志野演習場(千葉県船橋市および八千代市)で8日に行った降下訓練始めでは、約1時間半にわたる離島奪還訓練が公開された。有事が懸念される台湾に近い南西諸島(沖縄、鹿児島両県)は無数の離島が点在し、昨年12月に改定された「安保3文書」では空挺部隊の機動的な運用を明記。市民ら約1万人が、離島防衛に向けた一連の流れを見守った。
降下訓練始めには、陸自を中心とした自衛隊員約1千人に加え、米国、英国、豪州の各国軍から計約100人が参加。このうち英豪軍は今回が初参加で、米英軍は離島奪還訓練にも加わった。初の日米英豪4カ国での実施について、陸自関係者は「厳しい安全保障環境が背景にある」と話す。
訓練では、他国が日本の離島に侵攻したと想定。奪還に向け、陸自の先遣部隊が落下傘で離島に降下後、艦艇や航空機による火力支援を行ったとした上で、第1空挺団の隊員らが輸送機から相次いで降下した。
降下した隊員らによる地上戦闘を支援するため、ヘリコプターで運ばれた後続部隊や水陸機動部隊などに続き、最新の10式戦車や退役が進む74式戦車などの主力部隊が上陸。離島を事実上取り戻した後、来援した米英軍の空挺部隊が降下して地上に展開した。
訓練を視察した浜田靖一防衛相(衆院千葉12区)は、第1空挺団の隊員らに対し、「わが国を含む国際社会は深刻な挑戦を受けるなか、諸君一人一人が果たすべき責務は一層重く、国民からの期待もより大きなものとなっている」と訓示。さらなる職務への邁進(まいしん)を求めた。
降下訓練始めに先立ち、6日には近隣の陸自習志野駐屯地(船橋市)で日米英豪4カ国の空挺指揮官による会議が初めて開かれ、互いの連携を確認した。