安倍氏銃撃半年 悪質寄付規制へ救済法が整備 2世ら「実態に合っていない」

産経ニュース

安倍晋三元首相を銃撃し殺害したとして殺人容疑などで送検された山上徹也容疑者(42)は、安倍氏と接点があった世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者である母親が教団へ献金(寄付)を重ね、「家族が崩壊した」ことを犯行動機に挙げた。8日で事件から半年。この間、教団を含め法人への寄付の在り方などを規制する法改正や新法が短期間で整備されたが、宗教2世らからは「実態に合っていない」との声も上がる。

事件から約1カ月半後の昨年8月29日、高額の壺の売りつけなど教団による「霊感商法」被害を念頭に、霊感商法への対応を検証する消費者庁の検討会が初会合を開催。計7回の議論を経て、同年10月17日に提言をまとめた。

提言では消費者契約法(消契法)が定める霊感商法に対する「取り消し権」の利用実績が乏しいとして、適用要件の緩和を要望。近年の教団被害が、信者らに多額の献金を強いることによる生活困窮へ移っている背景も踏まえ、寄付の扱いも審議され、新法整備の必要性が指摘された。


未然防止と救済


寄付新法は当初、今年の通常国会以降の法案提出が見込まれたが、検討会の提言から1カ月後の昨年11月18日、政府が概要を与野党に提示。国会審議を経て、臨時国会最終日の12月10日に改正消契法を含め可決、成立し、いずれも今年1月5日に施行された。

新法の正式名称は「法人等による寄付の不当な勧誘の防止等に関する法律」。悪質な勧誘による寄付を規制する「未然防止」と、宗教2世ら家族が金銭を取り戻すための「救済」の2つを軸に構成される。

未然防止策では、法人や団体に対し、勧誘時に「個人の自由な意思を抑圧しない」などの配慮義務を定めた。さらに、霊感を用いた勧誘など6つの禁止行為を設け、「寄付者を困惑させること」を寄付取り消しの対象とした。安倍氏銃撃事件では山上容疑者の母親が家族の土地を売却し献金に充てていたことも踏まえ、禁止行為では別途、居住する住宅など生活維持に欠かせない資産の処分などによる寄付要求も禁じた。

禁止行為に違反すると、国は必要に応じて勧告や命令を出し、命令違反には1年以下の拘禁刑や100万円以下の罰金が科せられる。行政措置や罰則などは公布日(昨年12月16日)から1年後となる今年12月15日までに施行される。

救済措置では、寄付した本人が認めない場合でも、扶養下にある子供や配偶者が将来受け取るはずの養育費などの範囲で、寄付金返還や取り消しを求めることが可能に。改正消契法では、契約を取り消せる期間を締結5年から10年に、被害に気づいてからの取り消し可能期間が1年から3年に、それぞれ延長された。


宗教2世の懸念


一方、「宗教2世問題ネットワーク」の副代表で旧統一教会の宗教2世、山本サエコさん=仮名=は、取り戻せる金額が扶養義務の範囲内にとどまる現行制度に対し「数千万円、数億円単位で被害が起こっているにも関わらず、扶養義務の範囲では元が取れない」と指摘する。山本さんは両親の献金により幼少期から十分な食事も与えられないこともあり、大学進学費用として祖父母から渡された支援金も献金に使われた経験を持つ。「貧乏が当たり前で、権利が侵害されていると気付けない」と、子供の立場で法律を利用する難しさにも懸念を抱く。

宗教2世の被害を巡っては、教義順守を名目にした虐待行為の実態も明らかになっている。厚生労働省は昨年12月、「脅しによる宗教活動の強制は心理的虐待に当たる」などとする見解をまとめ、各自治体に対応指針として通知。旧統一教会が長年、無許可で養子縁組の斡旋(あっせん)を繰り返していた疑いも浮上しており、同省が実態把握を進めている。

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