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歌手・石川さゆり<6>亡き恩師「未発表詞」とウクライナ

産経ニュース
50周年リサイタルでウクライナのナターシャ・グジーさん(前列右から3人目)と
50周年リサイタルでウクライナのナターシャ・グジーさん(前列右から3人目)と

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《それは〝天国から届いた〟贈り物だった》

50周年の活動をしていたとき、阿久悠先生の長男、(深田)太郎さんから連絡があったんです。「さゆりさん、父の書いた詞が出てきたんです」。『みち 今もなお夢を忘れず』という先生の未発表の詞でした。

えっ、何だろう、これっ。50周年のいま、どうしてこんなタイトルの詞が太郎さんを介して私の手元に届いたんだろう。先生は平成19年に亡くなられている。だから思ったんです。これは先生からのメッセージなんだろうな、私への…。不思議な巡り合わせを感じました。これは絶対に曲を付けてみなさんに、このステージ(50周年リサイタル)で、いまの石川として、お届けしなきゃいけないと思い、曲にさせていただいたんです。

《作詞家・阿久悠は、作曲家・三木たかしとのコンビで昭和52年、『津軽海峡・冬景色』で石川さんを大ブレークさせた。続いて発表した『能登半島』『暖流』という〝旅情三部作〟で、自身を不動の地位につかせた恩師である》

阿久先生は生前、いっぱい日記をお書きになっていた。そして先生が、よくおっしゃっていた言葉があるんです。

「さゆり、いま何が起こっているのか、ニュースを、世の中の流れを見ておきなさいよ」

何かの会話をしたときにおっしゃっていたので、よく思い出すんです。日本の時の流れ、世の流れの中で、歌を聞いていただくことを生業(なりわい)としてやってきた。それを作っていくには、時代というものを感じなければいけないんだな、ということを先生に教えていただいた。

いま、ニュースではウクライナのことがとても気になっているんです。遠いですよね、日本からは…。そんな折、(ナターシャ・)グジーさんの存在を知ったんです。

《ナターシャ・グジーさんはウクライナの民族楽器、バンドゥーラ奏者。バンドゥーラは日本の琵琶のような形状をした弦鳴楽器で、透明感にあふれ、哀愁を帯びたかれんな音色が魅力である。ウクライナ生まれのグジーさんは8歳から音楽学校で学び、平成12年に来日、現在日本で活動をしている。グジーさんも日本の琵琶との共通性があると語っている》

日本で自分の国の文化を伝えようとしている人がいる。自分のリサイタルでご一緒して(グジーさんの気持ちを)届けたいと思ったんです。作曲の千住明さんにも、そんな相談をしました。ウクライナのバンドゥーラという楽器を、ぜひみなさんに聞いていただきたかった。

日本のみなさんにも、もっとウクライナを身近に感じてほしいという思いでした。「まだ戦争が続いているね」だけじゃない。彼女の家族はウクライナにいる。彼女は、本当に毎日ドキドキしながら日本で暮らしているんです。そういうことを、日本のみんなも忘れないでほしいという思いでステージに立ってもらったんです。

グジーさんの存在を知ったのはiPadなんですよ。検索して、ニュースを見て、そしたらバンドゥーラの奏者のことを特集していて。なんだこの楽器は、って…。この楽器で演奏活動をしている人がいることを知って、彼女のことが気になって調べたんです。そして連絡させてもらった、ええ、私から…。いまの時代だからできることですよね。

行動力がすごいって? ふふふ…。とにかく今、みなさんにウクライナのことを知ってもらいたかったんです。

《『みち 今もなお夢を忘れず』のイントロは、グジーさんの哀愁を帯びたバンドゥーラの音色から始まる。その演奏を、会場は静まり返って聞き入った。そして万雷の拍手…。亡き恩師から届いた〝未発表の詞〟を、石川さんは見事に〝世の中の流れ〟として再現させたのである》(聞き手 清水満)

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