続け上手と対極をなすのが、三日坊主。「私も」と自認する人は多そうだ。
「目標を立てたのに、誘惑に負けたり目標を忘れてしまったり、自覚が足りなかったりして、次を『先延ばし』にしてしまうことが、三日坊主に陥る主な原因」と話すのは、自制心をテーマに研究する東洋大の尾崎由佳教授(社会心理学)。
尾崎さんによれば「続ける」とは、目標達成のためになる行動をとり、ためにならない行動を我慢することだ。
先延ばしは、「今年こそ」と設定した目標をうっかり忘れてしまったり、1回くらいなら…と「ためにならない行動」への誘惑に負けることで起こる。
もう一つ、物事が続かない要因に挙がるのが〝どうにでもなれ効果〟だ。ちょっとつまずいたことで「どうでもいいや」と投げ出してしまう心理現象で、「むしろ目標に向けてある程度頑張ってきた人に起こりやすい」という。
つまり、先延ばしや〝どうにでもなれ効果〟を撃退すれば、今年こそ「続けられるわたし」になれる。
必要なのは、目標達成のために自ら律して誘惑を避け、「ためになる行動」をとる〝自制〟の繰り返しだ。うまく自制心を働かせるために、「仕組みと環境を作ろう」と尾崎さんは話す。
■「回避スイッチ」設けて 例えば受験で合格を目指すなら、目標達成のためになる行動(勉強)を続け、ためにならない行動(さぼって遊ぶ)を我慢する必要がある。
まずはためにならない行動の予防だ。おすすめは、さぼろうとしたときに、ためになる行動へと切り替える「回避スイッチ」を設定すること。
「さぼりたくなった日はカフェに行き、コーヒーを飲んでから勉強する」などと決めておくと、やるべきことの先延ばしを防ぐことができる。
目標達成のためになる行動を途切れさせない工夫も必要だろう。誘惑要因(ゲーム機など)を近くに置かない。進捗(達成度)を数値化するなど目に見えるように工夫し、他人と比べないことが肝心だ。
目標は大きく華々しく、理想の未来を想像して立てよう。次に、目標達成に向けてやることを、月間→週間→1日単位と細分化。毎日やることは、「ちょっと頑張ればできる」レベルに設定するとよい。
実は、ためにならない行動の抑制に関わる「自制心」は、年齢を重ねても成長することが分かっている。だから「もう年だから」「今更」などとは言っていられない。
「未来のことを考えて、行動できるのは人間だけ。どれほど高等でも他の霊長類は持っていない能力です」と尾崎さん。
失敗したり続けられなかったりしても、軌道修正すればいい。「遠い将来の目標のために今頑張ることができるのは、人間だけが持つ心のパワーです」
(田中万紀)