脳波で探るeスポーツの可能性 能力開発、メンタルケアにも

ビデオゲームを競技として捉えた「eスポーツ」の選手の脳波を計測し、能力開発やメンタルケアに役立てる研究が進められている。工業用機能部品などを手がけるNOK(エヌオーケー)は昨年、電気を通すゴム電極を備えた帽子を開発。脳と機械を結びつける「ブレーン・マシン・インターフェース」が関心を集める中、ハードウェアの開発に注力しながら産学連携の取り組みを進めることで新技術を活用する場を広げたいとしている。

機械部品メーカーがeスポーツ分野に

NOKが開発した脳波計測デバイス(同社提供)
NOKが開発した脳波計測デバイス(同社提供)

一見すると普通のスポーツキャップに見える「脳波計測デバイス」だが、NOKの独自技術が注ぎ込まれている。装着者の脳波を測るために導電性のフィラー(充填材)を配合したゴム電極が設置されているのだ。

技術本部商品企画部NB商品企画課の専門主事、木村泰介氏はこう説明する。

「合計で6つのゴム電極があります。右脳と左脳の脳波を測るために、額にあたる内側の部分に2つと、左右の耳たぶの表と裏を挟むように4つです」

従来の方式で頭部から脳波を計測すると、金属製の電極が頭皮と接触する部分に生理食塩水やジェルを塗る必要があるため、洗髪などの後始末に手間がかかった。だが、電極が触れる部位を額に変更してゴム電極を採用したことで、手軽に、しかも装着者のストレスを軽減する形で計測できるようになった。

NOKはエンジンなどの機械から潤滑油やガスが漏れるのを防ぐ部品、オイルシールの大手。オイルシールに使われる合成ゴムを開発してきた経緯からゴムに関するコア技術を持っており、導電性ゴムや生体ゴム電極のノウハウもあったため、eスポーツ向けに応用できたのだ。

脳波で知る“本当の自分”

この商品企画を担当した木村氏は2018年、水鉄砲でインクを撃ち合うオンラインゲームで遊んでいるときに「腕前を上げたい。プレー中の脳波を調べれば上達のきっかけがつかめるのでは」と考えて研究に着手した。すると、思い通りの良いプレーができたときや相手に倒されてしまったときなど、類似するシチュエーションでは脳波の形が似ていることが分かったという。

eスポーツ市場の熱気の高まりもあって脳波計測デバイスの開発に取りかかり、翌年、千葉市美浜区の幕張メッセで開かれた世界最大規模のゲーム見本市「東京ゲームショウ2019」で試作品をお披露目。ゲーム・eスポーツ業界にニーズがあると確信して開発を続けた。

そして昨年9月、改良した帽子型の脳波計測デバイスを「東京ゲームショウ2022」で展示した。ラジコンカーを操作してサッカーのような球技をするゲーム「ロケットリーグ」(Psyonix)を遊ぶ来場者の脳波を測定、分析して、その場でプレースタイルを4種類に分類する“性格診断”の企画が好評を博した。

東京ゲームショウ2022に出展したNOKのブース(同社提供、写真を一部加工しています)

縁の下の力持ちタイプだと自覚していた人が、脳波を分析すると実はリーダーシップを発揮して周りを導くタイプに分類されるというケースもありうるわけだ。体験者は4日間で約350人に上った。同企画の詳細な分析結果についてはパートナー企業のリトルソフトウェアと研究中だという。

不調選手の保護にも

“性格診断”の企画を支えたのが、これまでの脳波データ解析の成果だ。脳波が向き不向きの判断基準になるため、eスポーツで長所を伸ばすトレーニング計画を立てられるようになる。また、プロゲーマーと一般ゲーマーの脳波を比較することで優秀な選手の発掘や育成にも役立てられる。

脳波の見える化がパフォーマンス向上につながると期待される一方で、メンタルケアでの活用も重要視されている。NOKは、不調の選手の「精神が乱れたときの脳波」が確認されたときは試合や練習を中止するよう提案している。

木村氏らがプロゲーマーやeスポーツのプロチーム運営者から話を聞いたところ、成績の悪化や伸び悩みでメンタル不調に陥る選手が多く、対策が求められていることが分かった。しかし発展期にある日本のeスポーツ業界で、野球やサッカーといった成熟したプロスポーツ業界と同等の選手管理体制を築くことは容易ではない。比較的簡単に導入できる脳波計測デバイスには、不調の選手を適切なタイミングで休ませて再起を後押しする役割もあるのだ。「いつか、私達のデバイスを使ったチャンピオンが誕生してくれたら」。木村氏はそう願いを口にしていた。

国際オリンピック委員会(IOC)は今年6月、シンガポールで「第1回オリンピックeスポーツウイーク」を開催する。2021年に東京などで行われた「オリンピック バーチャルシリーズ」でもIOCはeスポーツを支援する姿勢を示したが、大会の注目度とeスポーツ市場の規模の拡大に比例して選手らにかかるプレッシャーも大きくなる。選手をケアし、業界の健全な発展を促すという意味でも脳波計測デバイスは注目されそうだ。

「オリンピック バーチャルシリーズ」野球部門の決勝大会。コナミの野球ゲームが採用された=2021年6月20日、東京・銀座

将来的にはeスポーツ業界で得られた脳波データを活用して、工場作業員や長距離ドライバーが安全に業務を行えるようにする「ヒヤリハット市場」や、脳科学の知見で消費者の心理を分析するニューロマーケティングなどの分野に事業展開することも想定している。木村氏は「バスやトラックの運転手のように、業務中に帽子をかぶる職種の方には帽子型の脳波計がマッチするのでは」と見通した。NOKは主に脳波データを取得する機器を作る立場にあるので、脳波データを用途に合わせて分析するリトルソフトウェア社と、学術的にエビデンスを示す九州産業大学と連携して商品開発を進めたいという。


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