寿命が延びると罹患(りかん)率が高まる心不全。病院での高度治療が必要と考えられがちな重度の心不全も在宅療養が可能な時代になっています。今回は心不全の在宅医療に取り組む循環器内科医の弓野大(だい)さんにそのノウハウなどを聞きました。来月まで2回にわたり掲載します。
高齢化に伴い罹患率が高くなる疾患は、がんと、心臓の機能が衰える心不全(心疾患)が上位を占めています。特に心不全は、2040年に日本社会が高齢化のピークを迎える中で、増加率が高い疾患として注目されています。
心不全患者数は2030年には130万人(死因1位のがん罹患者数は2022年で101万人)に上ると推計されています。
入退院の繰り返し
心不全患者は入退院を繰り返すという特徴がありますから、病院で治療を受ける患者数が増え続け、医療費も増大するという状況が生じます。
こうした状況は、感染症の大流行「パンデミック」になぞらえ「心不全パンデミック」と呼ばれ、予防に取り組む必要性が指摘されています。
それでは、増え続ける心不全にどう対応すべきなのか。私がこの問題に直面したのは、大学病院での研修医時代でした。重度の心不全患者さん、心臓移植を必要とする若い人たちと接する中で、彼らが一様に口にしたのは「家に帰りたい」という切実な思いでした。
以来、重度の心不全を患っていてもなんとか自宅で療養しながら治療を続ける在宅管理について研究し、重度の心不全を患っていても、「その人らしい生活」を送るためにはどうしたらよいのか、最善の方法は何かを考え続けました。