北朝鮮から不正に輸入したシジミの産地を偽って販売したとして、山口県警などが不正競争防止法違反の疑いで、山口県下関市や茨城、埼玉、福岡の水産会社など数十カ所を家宅捜索した。
北朝鮮から輸入したシジミを青森産やロシア産と偽った疑いがあり、北朝鮮側に資金が流れていた可能性もある。
産地偽装は、消費者の舌を欺く行為であるばかりではない。
日本政府は北朝鮮を相手とする輸出入を全面禁止する独自制裁を続けている。これは、北朝鮮の核実験やミサイル発射などに加え、解決への進展がない日本人拉致問題に対するものだ。
制裁破りの不正輸入は、拉致事件の解決を願う国民全体への裏切りであり、問題の風化にもつながるもので、到底許されない。
捜査当局は広範囲に及ぶ不正の実態を徹底的に解明し、厳正に対処してほしい。
アサリやシジミといった水産物は北朝鮮産の目玉品目として軍部や工作機関の資金源となってきたことでも知られる。
平成19年には、北朝鮮産のアサリを中国産と偽って輸入したとして、山口県警などが同県の輸入会社社長らを、外為法違反(無承認輸入)容疑で逮捕した。20年には、北朝鮮産ウニの不正輸入事件で警視庁が千葉県の貿易会社や東京都内の水産会社の社長らを同じ容疑で逮捕した事例もある。
北朝鮮は、日本列島越えの弾道ミサイルを含む国連安保理決議違反のミサイル発射を続けている。核の放棄についても明確に否定しており、7回目の核実験が近いとの観測もある。
なにより北朝鮮側は、横田めぐみさんら日本人被害者について再調査の約束すら反故(ほご)にしたまま、拉致問題を「全てすでに終わったこと」と言い放ち、「日本政府が問題を蒸し返して反北朝鮮の雰囲気をあおっている」と、非難すらしている。
こうした理不尽に対するには、制裁を徹底して圧力を強め、「拉致問題の解決なしに北朝鮮は未来を描くことはできない」と理解させる必要がある。その上で両国首脳同士の直接交渉に持ち込む以外に解決への道筋はない。
圧力の背景には、結集された国民の怒りがなくてはならない。そんなときに、北朝鮮を利する不正輸入などもってのほかである。