深層リポート

岩手発 期待高まる水稲の初冬直播き栽培実用化

産経ニュース
初冬直播き栽培に挑戦している岩手県八幡平市の農業法人かきのうえの農地(石田征広撮影)
初冬直播き栽培に挑戦している岩手県八幡平市の農業法人かきのうえの農地(石田征広撮影)

急速な規模拡大に直面している稲作農家が注目する画期的な栽培法がある。春先の育苗と田植えを省けるイネの初冬直播(じかま)き栽培だ。今月7日、岩手県滝沢市で開かれた「第3回生産者向け講習会」(岩手大学農学部主催)には、導入を目指す農家やJA関係者ら約30人が全国各地から参加し、熱心に意見交換した。

令和2年の農林水産省の農林業センサスによると、水稲の1戸当たりの経営面積は2・12ヘクタールだった。5年ごとの調査で、平成17年に1・19ヘクタールだった経営面積は、22年に1・43ヘクタール、27年に1・70ヘクタールと増え続けた。わずか15年間でほぼ倍増した格好だ。急速な規模拡大は高齢化でリタイアした農家が増える一方、地域で余力のある農家や農業法人がリタイアした農家のほ場の栽培を受託するほ場集積が進み、1戸当たりの経営面積を押し上げたことが大きい。

これを裏付けるように、水稲の経営体数は平成17年の174万戸が令和2年には84万戸に半減した一方、水稲の栽培面積は平成17年の208万ヘクタールが令和2年は178万ヘクタールと約15%の減少に止まった。

農業従事者(基幹的)の平均年齢は平成17の64・2歳が22年に66・1歳、27年に67・1歳、令和2年に67・8歳と上昇、60歳以上が約8割を占める。農水省の令和3年の農業構造動態調査でも平均年齢は67・9歳と上昇した。

この状況が続けば、60歳未満の担い手が2割の現状で、さらなるほ場集積による急速な規模拡大を吸収できず、年間700万トンとされるコメの国内自給量を確保できなくなる可能性も懸念されていた。

イネの初冬直播き栽培はこれを見越して岩手大学農学部の下野裕之教授(49)が平成20年から実用化に取り組んできた。積雪前のほ場に直播きした種籾が越冬して栽培できれば、手間とコストで規模拡大の壁となっている春の育苗や田植えを省けるからだ。

稲作農家が初冬直播きに注目するのは実用化が近いとみているからだ。すでに、下野教授が指導する青森、岩手、宮城3県の農業法人は初冬直播きで通常の栽培法と遜色ない10アール当たり500~600キロの収量を上げ、栽培面積を年々拡大している。

平成30年度から農研機構の補助金を活用、全国8カ所の実験ほ場で課題を一つ一つ解決してきた成果だ。種籾を冬の寒さから守り実用化の目安の出芽率40%以上に高めるコーティング剤、チラウム水和剤(農薬の一種の種子消毒剤)を見つけ、種籾が越冬して出芽に最適な地中深は地表1~2センチと確認した。

講習会で初冬直播き栽培の現状報告をした岩手県の八幡平市と北上市の農業法人の担当者は「もうハウスで1カ月かけて育苗する余裕はない。初冬直播きは実用化まで80%ぐらいきてる。あとは実績を積むだけ」と口をそろえた。

導入を目指して講習会に参加した秋田県の農業法人関係者は「すぐにでも取り入れたい。できそうな手応えを感じた」、この冬初挑戦の岩手県一関市の農家は「来年も1ヘクタール栽培面積が増える。育苗からだと大変と思い挑戦した。一定の収量が確保できれば続けたい」と話した。

岩手大農学部の滝沢農場で開かれたイネの初冬直播き栽培の講習会=岩手県滝沢市(石田征広撮影)

「春に集中する農作業を初冬に分散できれば、一層の大規模化も図れる」。令和2年の取材でこう語ったミウラファーム(青森県弘前市)の三浦裕行社長。下野教授の研究の協力者で、当時は2ヘクタールだった同ファームの初冬直播きはこの冬5倍の10ヘクタール。下野教授は「初冬直播きはまったく新しい技術。これが生産者の規模拡大と収益安定につながるよう、一日も早く実用化したい」と話している。

イネの初冬直播き栽培 日本の稲作の98%は春先にハウス内で育苗して田植えする移植栽培。規模拡大しようとすれば、ハウスの増設に加え、1カ月の育苗期間の温度管理にとコストがかさむ。初冬直播きなら農閑期を利用して既存の機械で直播きが可能で、10アール当たりに直播きする種籾の量も20キロから18キロに減少するなど低コストも魅力。

記者の独り言 中学か高校で習ったからだろう。日本の水稲の1戸当たりの栽培面積は1ヘクタールと固く信じていた。しかし、今回の取材で令和2年には2ヘクタールを超え、さらに急速な規模拡大が続いていることを知って大いに驚かされた。農家の高齢化は知っていても、現場で起きている変化にまで思いが及ばなかったからだ。また一つ教えられる取材になった。(石田征広)

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