話の肖像画

作詞家・松本隆<23> 無二のパートナー 大滝さんを失い

産経ニュース
レコーディングで打ち合わせをする「はっぴいえんど」時代の松本隆さん(右)と大滝詠一さん =昭和45年  (C)野上眞宏
レコーディングで打ち合わせをする「はっぴいえんど」時代の松本隆さん(右)と大滝詠一さん =昭和45年  (C)野上眞宏

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《「はっぴいえんど」時代からの盟友で、松本さんが作詞を手掛けたアルバム「A LONG VACATION」(愛称「ロンバケ」)で大ブレークした大滝詠一さんが、平成25年12月30日、東京都内で急死した。警察などによると、自宅でリンゴを食べていたところ突然倒れたといい、死因は解離性動脈瘤(りゅう)だった。親友でもあった大滝さんの訃報を、松本さんは遠く離れた関西で聞いた》

大滝さんが亡くなったとき、僕は「心臓をえぐり取られるようだ」とコメントした記憶があります。それだけの言葉で言い表せるものではありませんが、自分の半身が肉体的にも精神的にも裂かれてしまったような絶望的な喪失感にとらわれたのは間違いありません。

大滝さんの訃報を聞いたのは、12月30日でした。年が明けて1月3日、お通夜に出席するため、僕は新幹線で東京へと向かいました。

ところが、途中の岐阜羽島駅で列車が止まってしまったんです。列車はいつまで待っても動きません。いったい何が起きたんだ、と思ってニュースを見たら、有楽町駅あたりの新幹線高架近くで火事が起きているらしいということがわかりました。

架線とかに燃え移ったら完全にアウトじゃないか。このまま列車が動かなければ通夜や葬儀に間に合わなくなる…。なかなか動かない列車の中で、僕は焦燥感を募らせました。

《26年1月3日午前6時35分ごろ、JR有楽町駅(東京都千代田区)近くのビルから出火。ビル内のパチンコ店などが焼けた。火災現場が東海道新幹線の線路のすぐ脇だったことから、JR東海は5時間余りにわたり新幹線の運転を見合わせ、計106本が運休、約32万人に影響が出た》

どれだけ時間がたってからでしょうか、何げなく窓から外を眺めていたら、駅近くにあるレンタカー店が目に入ってきました。次の瞬間、思い立ちました。このままじっと待っていてもらちが明かない、よし新幹線から降りて車を借りて、自分で運転して東京まで行こう、と。

でも、よくよく考えると、僕は訃報を聞いて以来、大滝さんを亡くしたショックでほとんど寝られなかったんです。居眠り運転でもして事故を起こしたらしゃれにもならないぞ。そう思って、ぐっとがまんしました。

車内に閉じ込められていたのは、5、6時間ぐらいだったでしょうか。ようやく列車は動き出して、お通夜には何とか間に合いました。

《同月4日、都内の斎場で営まれた大滝さんの葬儀に、松本さんは、細野晴臣さん、鈴木茂さんの「はっぴいえんど」のメンバー2人とともに参列。3人は出席者を代表して弔辞を読んだ。松本さんは「はっぴいえんどが、3人になっちゃいました」と静かに語り始め、大滝さんとの出会いや、初めて自分の詞と大滝さんの曲が合わさって「春よ来い」「十二月の雨の日」の2曲が生まれた日のことなどを回想。「北へ還る十二月の旅人よ。ぼくらが灰になって消滅しても、残した作品たちは永遠に不死だね」「なぜ謎のように『十二月』という単語が詩の中にでてくるのか、やっとわかったよ。苦く美しい青春をありがとう」と松本さんらしい言葉で締めた》

大滝さんが亡くなって以来、正月はおめでたい日ではなくなってしまいました。毎年、年末年始を迎えると、いつにも増して大滝さんがいない寂しさに打ちひしがれます。

いいパートナーでした。もちろん細野さんも鈴木茂も親友です。でも、大滝さんが一番僕の詞を愛してくれたと思う。はっぴいえんど解散のときには気持ちがすれ違い、疎遠になってしまった時期もあったけれど、ロンバケを作るときに「これは松本に頼まなければ」と思ってくれて、家まで頼みに来てくれて…。山あり谷ありで、いろいろありましたけど、彼に代わるパートナーはいません。(聞き手 古野英明)

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