フィギュアスケート・全日本選手権第2日(23日、大阪・東和薬品ラクタブドーム)世界選手権(2023年3月、さいたま市)代表最終選考会を兼ねて行われ、男子ショートプログラム(SP)は3年ぶりの優勝を狙うグランプリ(GP)ファイナル覇者の宇野昌磨(25)=トヨタ自動車=がほぼミスのない演技を見せ、100・45点で首位に立った。2022年北京冬季五輪銀メダルで今季初戦の鍵山優真(19)=オリエンタルバイオ・中京大=はジャンプでミスが続き、81・39点で6位と出遅れた。男子のフリーは25日に実施する。
SPでフィニッシュした瞬間、世界王者の宇野はリンクサイドで崩れ落ちるステファン・ランビエル・コーチに向かって笑顔で〝ごめん〟というジェスチャーを見せた。
圧巻の演技に沸き上がる観客の反応と対照的な〝謝罪〟の理由は、最後のスピンの出来に満足できなかったから。それでも、全体を振り返れば「今できる自分の最高の演技でした」と納得。国際スケート連盟(ISU)非公認ながら、SPの今季世界最高得点をたたき出し、首位発進した。
演技前の6分間練習で体の異変を感じた。「スピードを出すと、絶対に(ジャンプで)失敗する」。意図的に滑るスピードを緩めて対応し、冒頭の4回転フリップは出来栄え点(GOE)で3・14点の加点。3本全てのジャンプを難なく決めた。「いろんな経験を何一つ投げ出さずにやってきたからこそ、気づけたこと」。長年世界のトップで戦ってきた経験を生かし、2位の島田に12・76点の大差をつけた。
世界で戦う森保ジャパンの活躍に心を奪われた。ゲーム好きでインドア派として知られる宇野が今冬、サッカーW杯カタール大会に夢中になった。普段は淡々と話す25歳が興奮気味に「僕、W杯めっちゃ見たんですよ。サッカーファンになった」と声を弾ませた。
今大会は得点を待つ「キス・アンド・クライ」に設置しているボードに出場選手がメッセージを記している。各選手が目標や意気込みを書く中、宇野は「ブラボー!」と日本代表のDF長友が叫んで話題になった言葉を借りた。日本列島を沸かせたヒーローに負けじと、貫禄の舞いでファンを熱狂させた。
25日のフリーは午後9時3分滑走の予定。「試合は自分のレベルアップにつながる場。成長するにはどんな選択をするべきか真剣に向き合えば、自然と結果はついてくる」。3年ぶり5度目の王座へ、死角はない。(武田千怜)