あれはサンケイスポーツに入社して2週間ぐらい経過した頃。高校野球の春季大阪大会取材を命じられた。北陽(現関大北陽)高が登場。記者生活で初めて名刺を差し出した。相手は松岡英孝監督(当時)。
「どうも! 岡田がお世話になっています」
そうです。現阪神監督・岡田彰布の高校時代の恩師だ。すでにバース、掛布、岡田の時代だったが、卒業後、何年経ってもカワイイ教え子のため、丁寧に対応して下さる方だった。恩師を通じて、天下の岡田選手に〝つながった〟気分になって興奮したもんだ。
取材を終えて、会社に電話。すると-。
「アホか! 今、何時やと思ってるんや」
何時って? 午後3時半過ぎではないか?
「スポーツ新聞記者たるもの、日曜のメインレースの出走時刻に電話するとは何事や。まして、きょうは皐月賞やぞ!」
競馬大好きの運動部デスクにメチャクチャ叱られた。やれ報連相(報告、連絡、相談)が大事。いや正確さが一番。締め切りは絶対。散々教えられたが、最初に怒鳴られた原因は、電話した時間。理不尽ですよね、どう考えても。
でも以降、記者人生でGⅠレースの出走時間にだけは会社に電話しないように、肝に銘じた。
ことしの皐月賞の日。ルーキー記者・丸橋正宣は、甲子園歴史館で開催された本紙専属評論家(田尾安志、八木裕、星野伸之)のトークショーの見学に来ていた。
控室。丸橋を評論家諸氏に紹介した。彼はレース部に配属予定なんですよ、と。すると、評論家さんから「皐月賞は何が勝ちそう?」と質問が。
競馬大好きルーキー、流暢に自分の予想を披露した。星野氏がビックリしていた。
「新人なのに、分かりやすく、理路整然と説明できるんですね」
自分の予想を納得させるのが仕事。彼には適性があるってことです。そう解説しておいた。
そこへ田尾さんが突っ込んだ。
「ジオグリフはどう? 買ってるんだけれど」
丸橋は「強いですが、僕はお薦めしません」。キッパリ言い切った。そして結果は…。ハイ、ジオグリフが勝ちました。
その日の阪神戦が終了し、紙面の評論の仕事がすべて終わった後、田尾さんが大笑い。