ベテラン記者コラム(389)

「あきらめたら試合終了」を体現した西田ら バレーボール全日本選手権の大逆転劇

サンスポ
バレーボールV1の10チームの選手たち。前列右から2人目が西田有志(ジェイテクト)
バレーボールV1の10チームの選手たち。前列右から2人目が西田有志(ジェイテクト)

バスケットボールで、広く知られた名言がある。新作アニメが公開中のマンガ『スラムダンク』で、主人公が所属する湘北高バスケ部・安西光義監督のセリフだ。

「あきらめたら そこで試合終了だよ」

この言葉の体現を、バスケではなくバレーボールで目の当たりにした。12月17日の天皇杯全日本選手権準決勝、ジェイテクト対JT広島だ。

序盤から相手サーブに押されて苦戦を強いられたジェイテクト。2セットを連取され、第3セットも22-24と、マッチポイントを握られた。ここで柳田将洋のスパイクはJT・小野寺太志のブロックの横を通り、コート外へ飛んだと見えた。

試合終了の笛。集まって喜ぶJTの選手たち。

だがジェイテクトはチャレンジ(ビデオ判定)を要求、打球が小野寺の左手に触れていたと判定された。「(小野寺が)触っていると思っていた。そこで試合が終わるなら、チャレンジするべきだと思った」と柳田。

試合が再開されると、ジェイテクトは一気に流れを奪う。再三、小野寺らのブロックにつかまっていた主砲・西田有志が強打を決め、柳田が強烈なサーブで相手を崩す。27-25でセットを奪うと、勢いのまま続く2セットも連取。逆転勝ちしてしまったのだ。

マンガや小説なら、わざとらしすぎて没にされるのではないかと思うほどの大逆転劇。記者席の私の周りでも「こんなことが起きるんだ」という声が上がっていた。

「あきらめない気持ちがみんなにあった」と柳田。試合再開後のサーブによる〝猛爆〟を「僕はああいうシチュエーションが好きなんだ、燃えると改めて感じた」と振り返り、「形容しがたい気持ち。これがあるからやめられない」と喜んだ。

二つの意味で「あきらめない」を体現したのが西田だ。翌日の決勝で優勝を決めた後に詳細を明かしたのだが、今季Vリーグが始まる2週間ほど前から39度前後の熱が続き、リーグ序盤から約1カ月、チームを離脱。複数の医師に診てもらったが、検査をしても原因がわからなかったという。

「(離脱した)3週間、孤独で誰とも話せていない状態。ものすごく不安で、バレーボールをやめざるを得ない結果を想像してしまっていた」

最終的に検査結果はよくないものの、熱は下がり、症状もないため、医師から「やってみましょうか」と復帰を認められた。現在は体調も良くなりつつあるという。そんな状況と知れば、JT戦後の言葉が、より重みを増して伝わってくる。

「練習でずっと不安感を持ちながらやるとしても、信じる道で切り開ける。そういう場面が見られた、自分でもウルってくるような試合内容だった。楽しいですね、バレーボールはやっぱり」

スポーツは人生の縮図。だから小説や映画、マンガやアニメでさまざまな物語が編まれてきた。しかし現実の物語がもたらす感慨は深みが違う。そんな場に立ち会い、寄り添うことができることを記者冥利(みょうり)に感じた日だった。(只木信昭)

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