11月の全国消費者物価指数は前年同月比の上昇率が拡大し、40年11カ月ぶりの高い伸びとなった。輸入品の価格を押し上げてきた急激な円安は足元で一服感が出ているが、原材料などのコスト増加分を価格転嫁する動きは続いており、生活必需品である食品をめぐっては来年1~4月に値上げ予定の品目数が前年同時期の約1・5倍になるとの民間調査もある。家計への逆風はまだ止みそうにない。
「最近、飲食店で値上げの張り紙をよく見かけるようになり、食品の値上げについても『自分ごと』として感じるようになった」
東京都江東区豊洲にある小型スーパー「たつみチェーン豊洲店」。今月22日に買い物に来ていた20代の会社員男性はこう話した。
店長の村松義康さんは「消費者は、値上げが報じられた商品についてはいくつもの店を回って価格をチェックしている」と指摘。この店でも、値上がりが顕著な食用油などは売れ行きが鈍いという。村松さんは「来年も値上げの大変さは続くと思うが、ウチにできることを考えて対応していく」と気を引き締める。
「私たちの業界は正直、厳しい1年だった」。小売業の団体、日本チェーンストア協会の増田充男執行理事はこう振り返る。スーパー各社は、食品や日用品のメーカーが打ち出した値上げを店頭価格にどれだけ反映させるかが悩みどころ。さらに、「(店舗の)光熱費など、あらゆるコストが上がっている。消費者の節約志向や生活防衛意識も強まっている」と指摘する。
食品値上げの波は、収まる気配がみえない。帝国データバンクは今月21日、来年1~4月に値上げ予定の食品の品目数が累計7152品目に上ったと発表。今月1日の発表では累計4425品目だったが、その後の約3週間でメーカーの値上げ発表が相次いだ。今年1~4月の4672品目と比べても53%増となる。
輸入コスト増加の要因となってきた円安は、日銀が今月20日に決めた金融緩和策の修正も相まって、一服感がみられる。ただ、帝国データの担当者は「足元の円高(傾向)によって輸入コストが緩和されていくと判断するのは時期尚早ではないか」と慎重な見方だ。
(森田晶宏、飯嶋彩希)