患者の胸部X線(レントゲン)画像から患者の年齢(X線年齢)を専門医よりも高精度に推定する人工知能(AI)を、理化学研究所などの共同研究グループが開発した。X線年齢が実年齢よりも高いと別の疾患をもっている可能性が高かったり、心不全による再入院・死亡率が統計学的に高いという研究結果が得られており、X線年齢を高精度に推定することで患者が抱える合併症のリスクや予後を割り出すことができるという。研究グループは心臓病のリスクを評価する新たな指標として臨床での応用に期待を示している。
異常所見や合併症の推測にも
理研・東京大学・榊原病院(東京都府中市)の3者による共同研究グループは、胸部X線画像の公共のデータベースである米国の国立衛生研究所(NIH)のデータセットから10万枚以上ものX線データを取り寄せ、レントゲンの正面画像1枚から患者の年齢を推定するAIを開発した。日本人の胸部X線画像のテストデータ245枚を用いて、推定の精度を検証した結果、平均誤差は4.95歳となり、放射線専門医などによる推定精度(平均誤差10.9歳)を大きく上回る結果となった。
このX線年齢の臨床的意義を調べるため、NIHのデータセットの胸部X線画像をもとに、AIの推定結果と患者の病歴や予後との関連を解析した結果、胸水の量が増えたり、臓器の組織が硬化する「線維化」などの異常所見を持った患者ではX線年齢が実年齢よりも高齢に推定されることが分かった。
さらに、心不全で入院した1562人のデータベースを用いて入院時のX線年齢を算出し、合併症との関連を検討した結果、高血圧症や心房細動などを併発している患者ではX線年齢が実年齢よりも1歳程度高齢に推定されることも判明。X線年齢が異常所見や隠れた合併症を推測する上で役立つ可能性も示された。