林芳正外相が、月内に中国を訪問する方向で調整が行われている。「ゼロコロナ」政策の転換で、中国国内では感染急拡大による混乱が見られるが、実現すれば外相の訪中は3年ぶりとなる。「親中派」として知られる林氏は、王毅国務委員兼外相らと会談して率直に意見交換する予定だ。日中間には、沖縄県・尖閣諸島周辺への中国海警局船の侵入や、「日本有事」に直結する台湾への軍事的圧迫、主権侵害が疑われる「非公式警察署」の問題など、さまざまな懸案が山積している。林氏は何をどのように伝えるべきか。中国に詳しい識者に聞いた。
林氏の訪中は、岸田文雄首相が先月、訪問先のタイで、中国の習近平国家主席と対面による首脳会談を行った際、あらゆるレベルで緊密に意思疎通を図るとして一致した経緯がある。
その後、岸田首相は16日に閣議決定した国家安全保障戦略など「安保3文書」で、戦後の安保政策を大きく転換した。中国の動向を「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と位置付けた。
中国による軍事的威圧が強まるなか、沖縄県の八重山日報社編集主幹、仲新城誠氏は、林氏への注文をこう語った。
「日本漁船が尖閣周辺に漁に行くたび、中国海警局船の威嚇行為を受け、エスカレートしている状況だ。王毅氏は以前、『偽装漁船だ』と主張したが、間違いなく漁業を生業にしている人々だ。林氏には、中国のプロパガンダに反論して、『度重なる領海侵入をやめ、尖閣周辺に艦船を派遣することを中止せよ』と伝えてほしい」
中国は8月、沖縄・波照間島近くの日本のEEZ(排他的経済水域)に弾道ミサイル5発を撃ち込んできた。今月17日には、中国空母「遼寧」など艦艇計6隻が沖縄南方の太平洋上で、戦闘機などの発着艦を行った。