政府は22日、安倍晋三元首相の国葬(国葬儀)を検証する有識者ヒアリングの報告書を公表した。国葬の実施については、内閣が裁量で行い、国会への説明も事後でよいとの意見があった一方、国会の事前関与などを求める意見もあった。国葬の対象者の選定に関しては、あらかじめ一律の基準を設けるのは困難だとの見方が目立った。
政府はヒアリングにあたって、憲法や行政法、外交などの有識者や報道関係者ら約50人に打診し、了承を得た21人に個別で面会。法的根拠▽実施の意義▽国会との関係▽国民の理解▽対象者▽経費や規模の妥当性-などの論点について意見聴取した。
法的根拠や国会との関係など決定のプロセスに関しては「内閣府設置法という根拠規定に基づき実施を決めた内閣の判断や手順に問題はなかった」として適正とする意見があった。
一方、「国葬は民主主義社会における重要事項であり、法律の根拠を要する」「幅広いコンセンサスがあった上で実施することが望ましく、国会が事前に関与することが望ましい」などの批判的な意見も出た。
国葬の外交的成果については「極めて多くの国々の代表が列席したこと自体が大きな成果」「安倍元首相の外交成果が確認された」など肯定的な意見が見られた。国葬実施の意義では「公を大事にする国であるという意味で必要」との指摘もあった。
対象者の基準策定は困難だとの見方が目立った。「民主主義社会では為政者を評価する人もしない人もおり、実施の基準を作るのは不可能」「最終的に首相が判断するとしか定めようがない」といった柔軟な判断を求める意見が出た。
国葬の検証をめぐっては野党や国民の一部から国葬実施への批判が出たことを踏まえ、岸田文雄首相が9月に有識者から意見聴取する考えを表明していた。