埼玉県越谷市で小中一貫校を新たに整備する構想が、揺れている。市はレイクタウン地区の人口増加に対応するため、新たに小中一貫校の整備を計画し、令和8年度に正式開校する予定だったが、新校舎の整備をめぐる工事の契約の承認を求める議案が市議会で否決された。市は1年遅れでの開校を目指すが、先行きは不透明だ。
小中一貫校を整備する構想が浮上したのは2年1月ごろ。大規模マンションの建設などにより、JR武蔵野線「越谷レイクタウン駅」周辺エリアの人口が市の予測を上回るペースで増加。児童生徒を取り巻く教育環境の再整備が必至となった。そこで、市は新たに3つの小中一貫校を計画。5年度内に着工し、7年度内に順次新校舎の使用を始め、8年度には3校同時に正式開校することを決めた。
市は3年4月に民間のノウハウや資金などを活用する「PFI方式」で小中一貫校の一部を整備する方針を決定。今年6月に市内の設備工事会社「ナカノヤ」を中心とするグループが約142億円で落札した。市と事業者は8月に仮契約を結び、市は契約の承認を求める議案を9月の市議会に提出。ところが、市議会は入札での選定過程が不透明などとして委員会と本会議で否決した。選定審査会の委員の人数が3人で、条例の上限として定められている5人を下回ったことなどが指摘された。
市議会での議案の否決を受け、市は業者の再選定などを行い1年遅れで3校の開校を目指している。計画の延期で生じる追加費用は1年間で約2億7千万円となる見通し。事業費の限度額は約31億円引き上げられ、174億円となった。建築資材の高騰などが影響しているという。
小中一貫校の開校時期の延期が決まり、市は11月に保護者など対象とする説明会を計11回開催した。説明会で寄せられた質問と回答を21日から市のホームページで公開している。
説明会では「なぜ議案が否決されたのか納得できない」「再否決になった場合はどうするのか」といった質問や「新校舎に期待を膨らませている子供の気持ちも考えてほしい」という意見も寄せられた。また、市と仮契約を結んでいたグループは7日、全市議32人に公開質問状を出したほか、市議会にも否決理由の明確化を求める陳情書を提出している。
市幹部は「事業者の選定過程に議会で指摘されたような問題はない」としながらも、選定審査会の委員数を3人から5人に増やすなど新たに議案を策定し、その可決に向けて説明を続けていく考えだ。説明会に参加した会社員の30代女性は「とにかく楽しい学校生活を送れる環境を整備してほしい。今の状態のままでは子供たちに説明できない…」と複雑な胸中を明かした。(星直人、写真も)